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第五話 額縁からの眼差し 6

「これ、私に会いたくなったら使って。」 ダニエル 「……何これ、食べれんの?」 「馬鹿言ってんじゃないわよ。」  雫の形をした色違いの宝石が付いたお揃いのネックレス、まるで欄の花が風になびいているかように薄い色と濃い色が美しく交わり合う紫色の宝石がついた方をダニエルに渡し、自分の首にはダニエルの目と同じ色合いのブルーの石が付いたネックレスを付けた。 「位置がわかるのよ、お互いの。」 ダニエル 「女の子と寝てたらバレちゃうじゃん。」 「……焼き殺すわよ?」 ダニエル 「こんなもん無くてもお前のこと見つけられるよ。」 「……分かってるわよそんな事、鈍いわね。」 ダニエル 「……何が?」 「……繋がっていたいのよ、乙女ってのは!」 ダニエル 「乙女って歳じゃ無ぇだ…」 「焼き殺すわよ?……十文字焼きにするわよ?」  こちらがこれを使うと、向こう側にもバレるらしいので恥ずかしくて中々使えずにいたのだ。だが常に肌身離さずに持っていた事の方がより恥ずかしくて、彼女には「どっかいっちまった」と分かり切った嘘をついていた。 照れくさくて使い方を聞けなかったためにどうやって使ったらいいのかもダニエルは知らず、ポケットから出したネックレスの宝石をぎゅっと握りしめて彼女のことを思い浮かべた。あの鬱陶しい声も長いこと聞けずにいると寂しいものだ。それはダニエルが宝石を握りしめてからほんの数分後のこと、紫色だった宝石がみるみる内に真っ黒に変色し、それを背景にして様々な光景が映し出された。馬車の中、ホテルの部屋、上半身が裸のウェア、子狐……そして一人のある男。その男に見覚えは無く、子狐達の映像の後からはジョシュアやクリス達の姿が一切現れなくなった。そういえば確か、調べたい事があるから単独行動をしていると言っていた。調べたい事とはきっとアレンのことだろう、アレンではなくウィリアムが生き返ったと知ったら、彼女はどう思うだろうか?途中で幾度が街の名前が記された木製の標識が写った。出店に寄り土産品の大きな世界地図を買うと、宝石の中に映る地名を順に指で追っていき、宝石が再び紫色に変わったところで指を止めた。 「ナッシュビル」ここからかなり離れているが、小さな町のようだ。街に着いてからは見つけるまでにそう時間は掛からないだろう。ほんの少しの間だけでいいのだ、彼女をぎゅっと抱きしめて安心した気持ちになりたい。それ無しではたった今、この世界で自分を見失ってしまいそうなのだから。丸めた地図を腰のローブの紐に差し込むと、ネックレスを首に通してダニエルは目的地へと向かった……そっと彼女を想いながら。

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