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第五話 額縁からの眼差し 7

ドラキュラ 「クーリースー君っ。」 ミイラ男 「ジョシュ。」  もうずっと長いことその顔を見ていなかったような、懐かしさで胸が一杯になりそうだ。実際にはほんの少しだけしか流れていないはずの時間が、まるで永遠に時が止まっていたように感じられる。声を掛け後ろからぎゅっと抱き締めるジョシュアの腕に、クリスは頬をさすった。 ドラキュラ 「クリス、お前さ……」  ジョシュアが真面目な顔で何かを言い掛けたその時、こちらの目を見つめていたクリスの視線がゆっくりと斜め後ろに移っていき、こちらの背後の何かを見た途端に「ぅああぁ!」と小さな悲鳴をあげた。 ドラキュラ 「……?!」  その視線を追って後ろを振り返ると、そこにはジョシュアの背丈の二倍ほどの大きさはある獣が口からダラダラとよだれを垂らしながらすぐそこに立っていた。 ドラキュラ 「……あー、何か御用かな?」 「ハァ、ハァ、ハァ……」 ドラキュラ 「……クリス君のお知り合い?」 ミイラ男 「んな訳無ぇだろ!」  こちらを真っ直ぐに見つめるその眼球からは、何一つ思考を読み取ることが出来ず、果たしてこの獣は次の瞬間にこの首に噛みつくのかそれとも林檎を餌付けしてほしいのか予測できぬ以上、こちらが今出来ることは獣を見つめ返すことだけ。センスを使うために一旦(まぶた)を閉じている間にクリスが襲われる可能性はゼロではない……さてどうするか。その時だった、獣と見つめ合うジョシュアとクリスの横からジャリッ、ジャリッと砂を踏む足音が響いたのだ。ライアンか?いやそれにしては気配が弱い……するとコショコショと何かがジョシュアの鼻に触れた。 ドラキュラ 「……っ??」  今すぐに確認したいが、何しろ獣との距離が近過ぎるため視線を離すのは危険だ。猫の尻尾の様なものが再びジョシュアの鼻をくすぐり、必死にくしゃみを耐えようとするジョシュアの目には次第に涙が滲んだ。 狼男 「っぷははは……やば、吸血鬼の涙!」 ミイラ男 「……何だ、ウェアか!」 ドラキュラ 「……へぇえっくしゅん!!」  安全だと知った上で解放したくしゃみは、周辺の木々にとまっていた鳥が一斉に飛び立つほどに響いた。 猫じゃらしを手に持つ確信犯の正体はウェアで、そんな彼の後ろで「すみません、お坊ちゃま…」と少し困った表情でクスクスと微笑むジュリア。獣が実は温厚な性格なのと、子供を探しているという事とざっくりとウェア達から説明され屋敷の周辺を回ってその子供を探すことにしたジョシュア達であった。 ドラキュラ 「ウチの敷地内にはグルーっと一周外壁があるから広いとは言えど限りはあるよ。俺のセンスとこの動物達の嗅覚を使って探してみよう。」 狼男 「動物…達?それって俺も含まれてるの?」 ドラキュラ 「…え、他に誰の事だと思ってるの?」    ムスっとして後ろに下がり、のそのそとジョシュア達の後をついて歩く獣の隣で獣同士仲良く歩くことにしたウェアは、小さな声で「お腹が減ったらあの男を食べていいからね。」と獣の耳元でそう呟いたのだった。

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