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第3話
シャワーを浴びてスッキリした体
でも心の中は
新しいことへの不安からか
漠然とモヤモヤしていた
少し体を休めておこう
とベッドに横になってみたが
頭は妙に冴えたままで眠れそうになかった
ソファーに移動して
社長から渡された紙袋から中身を取り出す
その中の1つに
さっきお会いした俳優さん達が幸せそうに
お互いを見つめ合う写真がパッケージされた作品を見つけた
今よりも少しあどけない表情だった
今回の来日は
そのシーズン2の公開記念だと言ってたな…
とりあえず
ダイジェストを見てみよう
とDVDをセットした
大学を舞台にした作品のようだ
はじめはちょっとした行き違いで友達を巻き込んで歪みあっていたところから
ある出来事を境に少しずつお互いを知り戸惑いつつもいつの間にか惹かれあう
そんな感じのストーリーだった
ストーリーの中には
サブカップルと呼ばれる組み合わせもあるようで
ダイジェスト版に続いてのっている
舞台裏の映像では、どのカップリングも
リアルカップルのように仲が良さそうで
方にもたれ掛かったり
膝に上に自然に手を置いてお互い見つめ合って
話をしている様子は
売り出すために作り出されたものではなく
本当にお互いを想いあっているのではないかと
映像からでさえも伝わるようだった
もしかしたら同性同士だからこそ
相手に気を使わずに
演じられるのかもしれない
そしてリアルに振る舞えるのかもしれない
ほんの少しの時間
しかもまだ本編すら見ていないのに
これから知りゆく未知の世界が
一気に楽しみと期待へ変わっていくようで
そんな自分に驚いた
そしていよいよ夕食の会場へ
少し早く着いたマネージャーと俺は
みんなの到着を待っていた
すこしすると急に賑やかに
お互い英語で自己紹介をし
席に着いた
周りに目をやると
3組のカップルが
それぞれにお互いを気遣いながら
椅子にすわるのをエスコートしたり
おしぼりをさりげなく渡してあげたりと
とても自然に行われていた
誰かがちょっかいを出すと
恋人役の俳優さんが嫉妬したような仕草をしたり…
それをお互いがごく自然に受け入れていて
とても幸せな空気に包まれていて…
それ見ている自分までもが
恋愛っていいな…
と心からそう思えていた
そんな気持ちになったのは
はじめてで…
今日は自分の心の変化に
驚くばかりだった
「リアルでもカップルなの?
とてもお互いを大切に思ってるのが
伝わるから」
と1番歳が近く
すぐに打ち解けられたマックに
勇気を出して聞いてみた
「今日のメンバーは実際のカップルはいないけど、
過去に共演した別の俳優さんとカップルの子もいるよ。
異性同士でも同性同士とか関係ない。
目の前のその人が自分にとって大切だから
それを伝えているだけだよ。
それに、俺は、もう2年も彼と一緒に仕事をして来た中で
本当にカップルになりと実は思ってるけどね 笑笑」
と最後はパートナーをー見つめながら
愛おしそうにそう語った
見つめられた子は
顔を真っ赤にして幸せそうに
見つめ返し、自然と腕を絡めていた
日本とタイでは文化に違いはあるだろう
だけど人を大切にする
ということは何か
その結果の現れが今の2人なんだなと
自然と受け止めることができた
次の日からの3日間
ステージでの歌やダンスやゲームなどの機会
そしてドラマのインタビューなど
全ての中に共演者同士の熱い結びつきを感じた
みんなで1つの作品を愛し抜く
だから共演者には
配慮を持って大切に接する
沢山の事学ばせ貰った3日間だった
その後も仲良くなった
マックとは頻繁に連絡を取り合うようになった
いよいよ自分の番だ…
脚本の筋書きはできているようだったが
主役の自分以外はまだ白紙
つまり
相手はディーンさんがこれから
自分の作品の世界観と俺にピッタリ合う人を
オーディションで選ぶというのだ
それから共演者も…
相手役はどんな人になるのか…
そして今日はようやく
オーディション開催と日本でディーンさんが
BLドラマを手掛けこと
出演が谷口翔に決まっている
ということを発表する記者会見の日だ
会場はタイでのビッグヒットを連発させる
脚本家による作品だけに注目度が高いようで
予想を超えるマスコミの数だった
マスコミから自分にも質問がくる
「BL作品の主演ということですが
どのような心境ですか?」
「先日、イベントを見学させて頂き
出演者の皆さんとも交流させて頂きましたが
お互いをとても大切にされているのが手に取るように
伝わってきて、素敵な環境でドラマが作成されていることが
わかりました。私も、ディーンさんの作品に携わらせて頂けることに
誇りを持って、新しいことにチャレンジさせて頂きたいですし、
これから決まっていくパートナーをはじめ共演者の
方たちと共に、日本のBL作品の代表作になるように
頑張って行きたいです。」
そう決意表明を述べた
日本ではまだまだ
広く受け入れられていない分野なのかもしれない
だからこそ先駆けとして
素敵な作品に携わりたいと
思った
オーディションは思った以上に
応募が殺到
数百名の応募者がいたのだが
最後的にディーンさんのお眼鏡に叶う人は
いなかった
最終オーディションには
自分も立ち合せて頂いたが
確かにピンとくる方には巡り会えなかった
それから3日後
ディーンさんとランチをしようと
約束の場所で待っていた
時間を少し過ぎたが
まだ彼の姿は見えなかった
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