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第4話
しばらく待っていると
ディーンさんだけではなく、
彼と一緒にもう1人の人影が近づいてきた
近くまで来た時にその男性が
とても困り顔なのがすぐに見て取れた
ん?もしかしてタイの俳優さんかな?
でも様子が変だった
「翔! 待たせてごめん!
見つけたんだ! そこの信号のところで!」
「えっと… 見つけたって?」
「お前の相手役だよ!」
「相手役って… ドラマの?
その子ポカンとしてるけど状況
わかってるの?」
強引に連れてこられたであろうその子は
とても不安そうに俺の方を見つめている
きっとあまり英語は得意ではないのだろう
困惑するのも当然だ
「翔 説明してよ
ピンときたんだ 彼しかいないって!
なぁ、頼む。 君のためにも逃せない」
「わかった…
とりあえず手首が真っ赤だから
離してあげて!」
「おぉ
ごめんね… 君が魅力的だった
君が必要なんだ!」
とディーンさんは言うも
キョトンとしている
あ
この子、きっと俺のことも知らないな…
そう思った
「いきなり声をかけられて
外国語で話されて、引っ張ってこられたの?
びっくりしたよね?」
「あっ… はい…
あの… どこかでお会いしました?
大学一緒とか?」
「うーん
一緒かはわからないけど、たぶん違う。
俺は谷口翔って言うんだけど…
どう説明しようかなぁ
あっ ネットで俺の名前検索してくれる?」
自分のことを説明するには手っ取り早いかと思った
こういう時に限って周りに
見つかって騒ぎになってもこまる
そう思った俺は
その子を壁側に移動させ
スマホを取り出している間に
伊達メガネを外しておいた
「…………っ えっ… え?」
と画面を見た彼は言いながら頭を上げた
そこにはさっきまでと違いメガネを外した俺
「えーーーーっ
同じ人ですよね…
え? あの雑誌とかCMで見る翔さん?」
「あ、知っててくれたんだぁ
よかったぁ。反応からして俺のこと知らないと思ってさぁ」
「CMのジュース
大好きで毎日飲んでますよ!ほら!」
と鞄から飲みかけのそれを取り出すと
俺をじっと見つめるくりくりの目が
あまりにも可愛いらしくって
ふにゃっとしたその笑顔からは
さっきまでの戸惑いと不安はすっかり取り除かれていて
はっと息を呑むほどだった
その笑顔に見惚れていると
「…っ あのぉ…
ごめんなさい! びっくりして
嬉しくってつい…
怒らせちゃいましたか…?」
と不安そうに下から見つめる視線は
ますます俺を釘付けにした
「えっ 違う違う
可愛いなぁって思っちゃった 笑笑」
思わず溢れ出たその言葉に
真っ赤になるその子
「可愛いって… 僕、男ですよ…」
そういいながらの上目遣い
これは無意識でタチが悪い
あざといくらいの可愛いさだ
「わかってるよ! ごめんね
ところでさぁ 名前教えてくれる?」
「はい! 松田彰って言います!
あの… お隣の方、どなたですか?
英語苦手だし、何言ってるか半分もわからなくって…」
「あきらくんかぁ
あきって呼んでんいい?」
馴れ馴れしいかと思ったけど
彼にも身近に感じて欲しかった
「……っ はい!
翔さん、なんてお呼びしたらいいですか?
って、勝手に翔さんって呼んじゃってる…
はっ…」
「いいよ、翔で 笑笑」
「そんなっ… 翔さん…で
お願いします!」
白い頬を真っ赤にしていう、あきが
とてつもなく可愛いく思えた
この子を相手役にしたい!
俺の心はすでに決まっていた
ディーンさん
見る目ある。さすがだ!
「笑笑 わかった じゃぁ気楽に呼んでね♪
でさぁ、あき! その隣の人と
俺、ランチに行くところだったんだけど
あきも一緒に行かない?
何か用事あったりする?
もうちょっと、あきと話がしたいんだけどな…
その隣の人絡みで 笑笑」
「……。」
無言のあき
顔覗き込んでじっと見つめると
恥ずかしそうにしながら口開く
「えっと…
その… 用事とかはないんですけど…
僕なんかが翔さんとランチって…
いいんでしょうか…」
「いいも何も、こっちがお願いしてるんだよ?
一緒に行ってくれる?」
願いを込めて聞いた
「…はい じゃぁ…」
苦手なものはないということを確認し
静かに話が出来る
いきつけに個室があるお店に電話をし
3人で向かった
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