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第6話

【side 彰】 家への帰り道 さっきまでのことが1人になると 狐につままれたような感覚になって 頭の中が混乱し始める ホームで電車を待っている時に ふと顔をあげた そこにはさっきまで一緒だった翔さんの大きな広告 きっと前からそこにあったんだろう… 黒いスーツを見に纏い 手には綺麗なシルエットの香水の瓶 サラサラの髪はかき上げられてとてもセクシーだ さっきまで僕は本当に この人と一緒にいたの? 一緒にご飯食べて…お話して… そして、ドラマの相手役に とお願いされて… 思い出せば出すほど現実味感じなくなっていった 最後にハグされた時の ほのかに香った爽やかな香りは 目の前に広告のものなのか… それとも本人のものなのか… 自分でも百面相だろうなと 気づいた時には周りから不思議そうな視線を感じた 慌てて到着した電車に飛び乗ったら 行き先が反対だったくらいには 動揺してたんだ… だってあんなに熱い視線… 有名人なのに気取ることのない優しさ… そして最後のハグ… ドキッとしない人なんて いるの? 何だかよくわからなくなってきた そしてぼーっとしたまま家に帰り着く 実家は長野でペンションを経営している だから今は東京で働く姉と2人暮らしだ 今日は姉が休みの日 「おかえり!遅かったねぇ 何かあった? ぼーっとして、顔も赤いよ? 具合悪い?」 「ん? そんなことない…」 「ほら、ご飯出来てるから 荷物置いてきたら?」 「うん… 」 自分では自覚がなかったのに 部屋に入って鏡をみたら なぜかほんのり赤かった 姉の愛花(まなか)はなんでもお見通しだ 「で? 具合悪くないなら恋でもした?」 「…っ、そんなわけ…」 「じゃあ何? 隠せる思ってるの?」 「あのね、まなちゃん …恋人役…頼まれたの…谷口翔さんに…」 「はぁ??? 何言ってんの? ちゃんとお姉ちゃんにわかるように説明して!」 「うん… あのね… 今度、タイで有名なBLドラマの脚本書いてる ディーンさんっていう人がねいてね…」 「知ってる! この前友達と イベント行ったんだけど!  今度日本でもドラマやるんだよ!!で?」 さすがBLファン 腐女子の鏡だ 「学校の帰りに横断歩道歩いてたら そのディーンさんになんか話しかけられて、腕引っ張られて ディーンさんが待ち合わせしてた翔さんのとこに 強引に連れていかれたの… それでランチご馳走になって…」 「…で?」 「そのドラマの主演が翔さんで 相手役のオーディションしたけど見つからなくて たまたま出会った僕が ディーンさんのイメージピッタリでね… 翔さんも、自分の相手役にってピンときたって… ねぇ…まなちゃん… こんな話、信じてくれないよね…?」 「……いや! あんたは嘘つけないでしょ! 信じないっていうか、びっくりっていうか… でも彰がBLドラマに出んの?」 「まぁ、まだオッケーしたわけでは…」 「はぁ?なんで?? 返事しない間に他の人見つかったらどうすんの??」 大きな声で言われてびっくりした 「えっとぉ… 反対しないの? 自分の可愛い弟ディーンさんのBLだよ? しかもあの有名な谷口翔の相手役! 出ない選択ってなんなわけ? 断るとかありえないよ! 連絡先聞いてるんでしょうね? 早く電話しなさい!!」 「いや…でも… 親にも聞いてないよ?それに…?」 「私が責任もって説得する!! それに、何? ムリとか弱音いらない! 早く電話しなさい! チャンス逃す気?」 「…えっとぉ… チャンスって…なんのチャンス?」 「あんたのえっとぉはいらん! さっさと行動する! ご飯はあと!」 こうなった時のお姉ちゃんは 有無を言わせない ということで… いつものように お姉ちゃんに押し切られる形で 翔さんに電話することになった

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