8 / 12

第8話

昨日からずっとソワソワしながら 時計ばかりをみて1日を過ごしている 今日はやっと あきに会える 朝から楽しみで仕方なかった 午前中はファッション雑誌の撮影 そのまま午後からはインタビューが入っている いつもと変わらず、かけられる声にのせられて 指示通りにポージングしているつもりだった カメラマンからは 「なんかいいことあったのー? 今日はいつもより積極的だ」 とポージングを褒められた 無意識だったけど 何かあるのだとしたら これからあきにあうからかもしれない そしていよいよ予定の時間が近づく 仕事場を後にして 待ち合わせの場所まで車で向かう 近くの駐車場に停めて時計を見ると 16時20分だった ちょっと早いけど あきを待たせたくない気持ちと 早く会いたい気持ちで車後にした そして待ち合わせたビルの死角に目をやると そこにはもうせうでのあきの姿 落ち着かないのか、その場でくるくる回ったり スマホを握りしめ画面をじっと見たかと思うと 周りをキョロキョロ見回したり 動きの全てが可愛いくって ふっと笑いを堪えて眺めていると あきと目が合う まんまるな目をもっと丸くさせて俺の方をみると あきが、小走り近づいてきた 「あき 待たせちゃってごめんね」 「翔さん 全然まってないですよぉ?」 「そ? ならいいけど 笑笑 じゃぁいこっか」 頭をポンポンとすると 真っ赤な顔をして一歩さがって後ろを突いてくる 尻尾でも見えそうなくらい 笑笑 可愛い子犬みたいだ 車までくると助手席のドアを開ける 「あき、乗って?」 「…はぃ… あのぉ お姫様みたい…」 「お姫様って 笑笑」 「あ、男だからお姫様じゃぁない…」 「笑笑 あき、可愛い ほら、閉めるよ」 ドアを閉めて運転席に向かうまで自分がにやけてしまった 「翔さん! またさっき、可愛いって…」 ちょっと拗ねたような言い方せ言う 「ごめんごめん だって、あきが可愛いかったからつい 弟できたみたいで嬉しいな♪」 「…弟 なんだぁ 笑笑 翔さんがお兄ちゃんなんて みんなから羨ましがられて嫉妬されちゃいますね 嬉しいなぁ」 「そぉ? よかった」 走ってしばらくすると 沈黙なことに気づく でも全然嫌じゃない なぜか、あきといると沈黙も怖くない 「ねぇ、あき さっきからなんでじーっとみてんの?」 「だって、翔さんの運転する横顔 めーっちゃカッコいいから見惚れてました!」 「あきって、恥ずかしがりなくせに そういうことは言っちゃえるのも可愛いよね」 急にあきの目が泳ぐ 「…っ」 「そういうとこも、あきのいいとこだと思うよ」 「もぉ! 翔さん からかわないでください! これから社長さんに会うなんて緊張してるんです」 口を尖んがらせて、あきが言う 「大丈夫だよ、俺がついてるから。ね?」 「はい。 僕、翔さんに大丈夫って言われると 本当に大丈夫って思っちゃうんです」 「大丈夫だよ」 もう一度そう言って あきをじっと見つめながら微笑んだ 今までこんなにも事務所に行くことが楽しいと 思ったことがあっただろうか あっという間にいつもの 地下駐車場に到着した 助手席にまわってドアを開ける 緊張した面持ちのあきの腰に そっと手を添えてエレベーターへと向かう コンコン 「はーい 待ってたよぉ 入ってきてー。」 中から社長の嬉しそうな声が聞こえる 「失礼します!」 あきが固まってしまわないように そっと自分の隣に連れてきて ソファーに座らせる 「はじめまして! 彰くん! ディーンさんと翔から聞いてるよ! もう、翔とはカップルに見えるくらい2人いい感じだね〜 翔を見つめる感じ、いい! さすがディーンさん見る目ある」

ともだちにシェアしよう!