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「じゃあ、ずーっと勉強ばっかしてたのは……」
「家のことを考えないようにって現実逃避もしてたよ?でも……村瀬くんにもう一回会ってこのドキドキは恋だって自覚したから……」
微笑んだ宮部があまりにも愛おしくてその手を掴もうとすると、宮部はクルッと向きを変えて手にあるシャーペンと消ゴムを見せてくる。
「ねぇ、本物?」
「は?」
「ふふ……本望だよ」
「あ"?」
今更、過去の間違いを指摘されて睨んでやると、宮部はクスクスと笑い出した。
「くっそ……キスしてやるっ!」
「な、何でそうなるんだよっ!!」
悔しいような恥ずかしいようなそれを誤魔化すように手を伸ばすと宮部は慌てて逃げる。
スマホが着信を知らせてくると、俺は宮部の手だけ掴んでおいて電話に出た。
『ねぇ、まだなの?さすがにお腹空いてあのファミレスに来てみたのに居ないし……どうなってるのよ?』
姉ちゃんの呆れたようなちょっと心配するような声。
「ご、ごめんなさい」
スピーカーにしてやると宮部はペコペコと頭を下げる。
『え?せいくん!?琉生と一緒に居るの?』
「居るって」
『今、どこ!?すぐ行くからもう二人とも乗りなさい!』
姉ちゃんの勢いに押されて位置情報を送ると、俺は宮部と目を合わせて少し笑った。
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