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第2話

 近年、同性婚が認められ、同性同士でも子供が欲しいという要望を政府が真剣に考えてくれてから早数年。  男性のお尻の穴を腟化して、出産できるという薬が認可されてから、無事出産出来ましたというニュースが続き、もう同性同士の結婚は珍しい事ではなくなった。  ニュースでもこの手の話題を見ることはなくなった。この、同性であっても子供を持てるようにと開発された薬は、政府の少子化対策の一端でもあったらしい。  俺の周りには同性婚の実例がなくて、まさか自分がその当事者になるなんて思ってもいなかった。  最近毎日のように見合い写真を持ってきては、俺に見合いをさせて早々に結婚させようとする母に疲れていた。あまりにうんざりして幼なじみというか、産まれた時から家も隣同士、就職先も一緒という奇跡的に縁がある亮ちゃんに相談というか愚痴る日々を過ごしていた。  毎日一緒に会社から出てたから、毎日同じ光景を亮ちゃんも見てたしね。一から話す手間も省ける。  亮ちゃんは、穏やかに聞いてくれて、一度も結婚の後押しなんかしてこなくて。産まれた時から幼なじみであって一番の親友のまま、居心地良い関係のまま、この先もずっとこの関係が続くんだと思っていた。  まさか亮ちゃんが俺のために、女体ではないけれど、出産出来る身体になってくれるなんて、想像したこともなかった。今は仕事がようやく楽しくなってきて、やりがいも感じるようになってきて、つるむなら横に亮ちゃんがいて。  それで満足してたから、別に彼女もいらなかったし、結婚して自分の家庭をもつ、子供がいる自分てのもまだまだ空想上、現実味0な事案だったんだ。  子供は大好きだからそのうちね、俺も結婚して子育て一緒にしたり、楽しく子供と遊ぶ日が来るんだろうな~って漠然とは考えた時もあった。  亮ちゃんもそうだろうって、勝手に思ってたんだ。  気さくな性格で笑顔も多い亮ちゃんはもてないわけじゃないけど、社会人になってから彼女がいた事はないし、俺といれば楽しいんだって伝わってきてた。  あぁ、亮ちゃんもきっと同じ気持ちだから、彼女って存在今はいらないんだろうなって。  だって、多分作ろうとすればすぐ彼女出来ると思うんだよ。170㎝は越えてる身長に、優しそうな目元。実際、小さい頃から俺に凄く優しい。 「ねぇ亮ちゃん。無理して妊娠出来る身体にならなくていいんだよ?調べたけど、あれって、亮ちゃんにだけ負担かかるみたいだから…俺が困ってるからって、そこまでしなくていいんだよ?」  帰宅して夕飯を食べてテレビを見ていたら亮ちゃんがアパートに訪ねてきたので、少し話し合おうと、開口一番そう伝えた。  俺も亮ちゃんも就職と同時に家を出て一人暮らしをしている。 「俊。僕さ、会社終わってから早速病院行ってきたんだ。簡単な検査して、大丈夫だって太鼓判もらったから、その場で1回目の投薬してもらって、飲み薬ももらってきた」 「えっ?もう行ってきたの?そんな、子供産む身体で薄着ダメじゃん。冷えなかった?」  途端に甲斐甲斐しく自分の上着を僕に羽織らせたり、手を温めようと両手で包んできたり。慌ててて笑っちゃうんだけど。それにさ。 「俊、僕が子供産むのまだ納得してない感じだったのに、そんな優しく温めてくれるんだ?」 「あっ、そう言えばそうだった。今それを話そうとしてたのに」 「ぷっ。そんなとこ俊らしいよ」 「そんな事言うなら温めてあげないし、今日の抱き枕にもなってあげないからな」 「抱き枕が必要なのは俊の方でしょ」  

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