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第2話

 トーストを焼いてお湯を沸かしてる俊の鼻歌と一緒に聞こえるのは鳥の声。さっき挨拶にきてた鳥たちのうちの数羽だろう。 「わぁ、そうなんだ、ふきのとうかぁ。俺はそういう苦そうなのは遠慮しとくけど、亮ちゃんは好きなはず。えっ?冬眠してた熊くんも起きたの?久しぶりに会いたいな~」  鳥と話す俊の嬉しそうな声を聞くだけで亮二も楽しくなってくる。 「ふきのとう出てきたの?」 「そう!お山にね、ふきのとう出てきたから、旬ちゃんの旦那さんの亮二さんは食べるんじゃない?って言ってる。それから、熊さんも冬眠から目覚めたんだよって」 さっき聞こえたままの話だ。  物心ついた頃は俊が一人で喋ってて、動物が周りに集まってるだけだろって思ってたけど、それは違った。  無くしものをすると、必ずと言っていいほど動物たちが家の中に入り込み、俺たち人間の目では届かないような隙間から探して見つけてくれるのだ。  これでは俺だって、うちの子は夢見がちねって微笑ましく見てた俊のお母さんだって、信じないわけにいかなかった。  俊からしたらそれが普通。生まれた頃から自然な事だったし、隠すなんて選択肢をもたない真っ直ぐで正直に育った人間だったから、学校では嘘つき呼ばわりされたり、仲間外れもあって、違うクラスの時は庇ってあげられずにもどかしい思いもした。  そんな俊を守らなくちゃって思いが沸いたのは、これも俺にとって自然な流れだったと思う。守らなきゃ、隣にいなきゃはいつしか愛しい者を守る気持ちに変わって。 「俊はちょっと変わった所があるから、普通に結婚して子供を授かって…っていう人生は送れないと思うの。亮ちゃん、よろしくね」って逆に俊のお母さんに頼まれた時は焦ったな。嬉しかったけど。  そんなわけで、俺の幼馴染みだった俊は俺の奥さんとして、隣にいるってわけだ。 「俊、そう言えばおはようのキスは?」 声をかけると、あっ、と小さい声で呟いて、「ちょっと待ってて」と鳥達に。  窓辺に向かって話しかけてた俊が後ろを向いて、俺が少しだけ背伸びをして軽くキス。 「おはよ、亮ちゃん」 軽いキスだろうと顔を赤らめてこっちを見る俊を朝から見られるのは幸せだ。  全く、夜は夜で案外大胆にエッチになるくせに、こうやって朝のキスをねだると途端に恥ずかしがるんだから。    これだから可愛くて堪らないな、うちの奥さんは。『奥さん』て、わざわざ呼んでみるのも、俊が恥ずかしがるのが可愛くてわざとそう呼んでるんだ。

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