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第6話

 ガサガサガサ。竹藪の方から大型動物が出てくる音がした。 「おい!崇!俺の俊に手ぇ出すなよ!」 「亮ちゃん!」 「あー、やっぱり亮二さん、離れたと見せかけて心配で離れられなかったんでしょー、戻って着いてきてたんでしょー」  大型動物じゃなくて亮ちゃんだった。嬉しいな、俺に愛想尽かしたわけじゃなさそうだ。 「うるせ!お前のその分かってますよ的な顔ムカつく!年下の癖に!」 「はいはい、邪魔者はしばらく山の散策してきますよ。俊さん、ビックリして涙止まったみたいで良かったです」  崇は、手を振りながら亮ちゃんが出てきた竹藪の方へガサガサと消えていった。 「亮ちゃん…俺が呼んだ鳥達が亮ちゃんの周りに沢山…ぷっ…近くにいたんだ」 「笑うなよ。お前の事を俺が放っていけるわけないだろ」 「あはっ、だめだ、嬉しくて笑いとまんない。鳥くん達、ありがとうね。俺の旦那さん近くにいたんだね」  ピピッ、チチチチチ。  鳥達は口々に俊ちゃん良かったねーと言って、俺らの上空をくるくる回ってから飛んでいった。 「俊ちゃん良かったね。旦那さん、昔から俊ちゃんの事が一番大事だもんねって言ってた。…えへっ」 「そんなの、鳥に言われなくたって俊が一番よく分かってるだろ」 「うん。俺も亮ちゃんがずっと一番大事だしね」  満面の笑みで真っ直ぐこっちを見てくれる俊。こういうの何て言うんだっけ。今泣いたカラスがなんとやら。 「ふきのとう探すのと、くまに挨拶したいんだろ?ほら、手」  亮ちゃんが手を差し出して待ってくれてるから、その手の中に自分の手を納めた。  俺のが手でかいんだけどね。  精一杯包み込んでくれる。その気持ちが嬉しいんだ。  ちっちゃい時からそう。俺を引っ張っていってくれる、安心させてくれる亮ちゃんの手。  本人は俺より背が低いとか、手が小さいとか気にしてるみたいなんだけど、そんなこと、どうでもいい事なのにね。伝えても、亮ちゃん頑固なとこあるから「いや、奥さんより小さいってちょっとプライドが…」とかボソボソ言い訳したりする。  俺が安心できるよう、包み込んでくれるのはいつも亮ちゃんなんだもん、気にしなくていいのにな。     山道をぐんぐん進みながら、前を行く亮ちゃんの後頭部を見てた。せっかく山に来てもね、山の景色より亮ちゃん見ちゃうんだよ。そんな自分が可笑しくなってクスっと笑い声をあげそうになると、亮ちゃんが口を開いた。 「俺は、さ、あいつみたいに男らしい体格もしてないし、あんなに顔イケメンじゃないのは自分で知ってるけど、ずっと俊の側にいたのは自分で、俊のことを一番分かってるのも自分だっていう自信だけはあるから。だから、その、これからも一緒に歩いてほしいんだけど、いいかな?」 途中まで自信たっぷりに言ってたのに、最後いいかな?って聞く辺り、相当葛藤してたのかな。 「やだなぁ亮ちゃん。当たり前すぎる事言わないでよ。俺の、俺だけの旦那さんはずっと亮ちゃんだけでしょ」 「俊………そうだよな!」 「当たり前の事だよ?あっ、くまくんとこまで近いって。行こうよ」  鳥たちに道案内してもらって、今度は俺が亮ちゃんを引っ張って行く番だった。 「なぁ、俊。鳥だけじゃなく、ありとあらゆる動物が着いてきてるんだか見送ってくれてるんだか、童話の中の結婚式みたいになってるんだけど」 「いいじゃん。2回目の結婚式、参列者は俺の友達。ねっ?」

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