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夢の舞台へ④
氷が溶けきって薄くなったハイボールを、また少し喉奥に流し込む。
正直ぬるくなってしまって美味しくはないけれど、会話下手で手持ち無沙汰な僕の大事な武器だった。
「ねぇねぇ、吉良くんもさ、二次会行くよね」
「え、僕?」
そんな時、斜め向かいに座っていた女子が突然声をかけてきた。
女子と話すこと自体久しぶりで、素っ頓狂な声を出してしまって頬を染める僕をからかいもせず、彼女は柔らかく微笑んだ。
「この後予定ないなら、せっかくだし行こうよ」
「うん……」
その笑顔があまりにも眩しすぎた。
断ることに気が引けて、僕は視線を外しながらぎこちなく了承の意を示すことしかできなかった。
本当はさっさと帰る予定だったのに……。
いつもなら奏の助け舟がやってきただろうけれど、今回ばかりは運が悪かった。
あまり量は食べていないのに、なんだか無性に胃の中が重たくなった気がした。
「行くの?」
「……行くよ」
「珍しいじゃん」
「…………」
永遠かのように思われた親睦会がようやくお開きになり、店を出て真っ先に向かうは奏の隣。
まさか僕が二次会に行くとは思ってもいなかったらしい。そりゃあ奏も驚くよな、僕自身が一番驚いてるんだから。
「羽目を外しすぎないように、特に宇田」
「何で俺だけ名指し!?」
二次会には教授は参加しないらしく、生徒に釘を刺すと駅の方に向かっていった。その後ろ姿を僕は羨ましく眺めていた。
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