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第4話

「ん……、……っ」  口内を舌で弄ばれて息をするのもままならない。苦しい。  ハルの指が慎重すぎるほど慎重に、ゆっくりと智の中に入り、好いところを探り当て、じわじわと、次第に容赦なく責め立てる。 「っ、ん、う……っ」  声を上げるのが恥ずかしく、必死になって我慢していると、呼吸をやめてしまう。息を止めるから、また苦しくなる。  ドキドキして苦しい。このドキドキはどういったドキドキなのだろう。人はときめいたとき、恐怖するとき、緊張したとき、ドキドキするようだけれど……  ――全部、かも。  汗みずくになって全身全霊を賭して智を気持ちよくさせてくるハルは、下から見ていて惚れ惚れする。愛しさ溢れる眼差しで智を見つめ、愛の言葉を囁いてくれる。胸の奥がきゅっと掴まれたような、痛こそばゆいような感覚が、何度も智の肌を粟立たせた。 「入れるで」  ハルの声に、それまで恍惚として弛緩状態だった智の体が、にわかに緊張態勢に入る。ついにあれが入ってくるのか、と思うと、自然と身が強ばってしまう。自分を自分じゃなくしてしまう、引き剥がされないよう懸命にしがみついている理性をいともたやすく奪い取ってしまう、あれが。 「っ、それ、だめ」  先端まで引き抜かれ再度、奥を抉られる。何かそら恐ろしいものが襲いかかってくるような恐怖が、じわりじわりと迫り上がる。もちろん、だめと言ったところでハルがやめることはない。こういうときの智の「だめ」は「もっと」を意味するということを、ハルは知っている。 「……っぅあっ、ああ……」  弱々しい、遠慮がちな声が漏れ出てしまうことも止められず、この夜も智はどこかへ攫われるように絶頂へ導かれた。 「さんざんしてからこんなん言うんもアレなんやけど、やっぱりまだ、するの嫌?」  智の乱れた髪を優しく手で梳いて整えるハルはまだ息が荒く、汗まみれ。僕の髪なんかより先に汗を拭けばいいのに、と智は思う。いつもは思うだけなのだが、実行にうつしてみることにした。掌でハルの額の汗を優しく拭うとハルは異様に動揺した。 「な、にしてん」 「汗が」 「えーちゃんの手に汗つくやろが!」  言いながら慌てて自分の手で汗を拭う。ハルの耳は真っ赤だ。 「あの……するの、嫌じゃない、ですよ」

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