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最後の仕事(9)※

 目を覚ますと、体は湯ではなく布団に包まれていた。  もう見慣れた、グレアムの寝室。 「お目覚めか、王子様」  声に振り向けばグレアムが、面白そうにサギトを見つめている。サギトの隣に身を横たえ、肘で頭を支えながら。  サギトは慌てて上体を起こした。シンプルだが清潔な部屋着を着せられている。 「俺、寝たのか!?」 「すごい可愛かったぞ、お風呂で寝ちゃうサギトは。赤ちゃんみたいで!」 「うっ……。どのくらい寝てたんだ」 「四時間くらいかな。もう午後のティータイムだ」 「そんなに……」 「昨日徹夜だったからな、疲れがたまってたよな。俺もちょっと寝たよ」  一体いつ寝てしまったのか。サギトは自分の記憶をたどる。髪を洗われるところまでは、はっきりと覚えているのだが。  髪を洗われて、その後は。 「も、もしかして、寝ている間に俺の体、洗ってくれたのか?この服を着せてくれたのも、お前か?」  グレアムはちょっと気まずそうな顔をする。 「あ、ええと、……うん、そうだ。すまん」 「い、いや謝るな」 「体を洗われるの嫌だって言ってたのに、洗っちまった」 「いや……おぼろげにしか覚えてないが、お前に洗われるのは、その、とても……気持ちよかった。なんだか幸せな気持ちになった……」  サギトはそう言ってうつむく。感謝の念を伝えたかったのだが、言葉にするとかなり恥ずかしい。  グレアムの返事はなかった。  しばらく沈黙が続き、なぜ黙ってるんだろう、と思ってサギトはグレアムを見る。  グレアムは眉間にしわを寄せて怖い顔をしていた。 「もう、無理だ……。限界だ……。俺は十分に耐えた……」 「は?なにを……」  グレアムが文字通り襲いかかって来た。  抱きしめられ、噛みつくように首を吸われた。太もものあたりに硬いものがぐりぐりと押し付けられる。 「わわっ、ちょっと待て、昼間だぞ!」 「サギトが二十四時間エロいのが悪い!」 「エロいのはお前だっ」  グレアムはサギトの身につける部屋着を剥ぐように脱がせる。着せたり脱がせたり、忙しい男だ。自らも服を脱ぎ捨てると、ベッド脇に常備している小瓶をもぎ取り、蓋を開けてその中のクリームを指になすりつけた。  仰向けに寝かせたサギトの足を押し開き、双丘の狭間を指で撫でる。 「ふ、あ……っ」  いきなりあられもない格好をさせられて焦るサギトを、グレアムはすがるような目で見る。 「ダメか……?」 (この体勢で聞くな!)  サギトは、グレアムの下半身ですくと立ち上がるご立派なものをちらりと見て、すぐに目をそらした。  頬を朱に染めて、ボソリと言う。 「もういい。す、好きにしろ……」  サギトの仕事に徹夜で付き合ってくれた上に、居眠りした自分の世話までしてくれた。  昼間から不埒なことをするくらい、許さねば。 「サギト……!」  一時停止していたグレアムの指が、再び動き始める。指は焦らす余裕もなくすぼまりを揉み込むと、中へと入り込んで来た。 「んくっ、あっ……」  甘い刺激にまごつく間もなく唇を重ねられ、舌を吸われた。サギトの舌の表と裏を、グレアムの舌がくねるように舐める。頭がとろけ、腰が痺れた。  指は急くように秘所の奥へと割り進む。狭い穴に沈められた長い指が巧妙に動いて、早くも快感を生じさせる。既に幾度も肌を重ね、弱いところ全て知られてしまっていた。  サギトはいつもより早急な愛撫に翻弄される。  何もしないでいると快感の淵に溺れてしまいそうで、自らも舌を動かした。唾液が混ざり合い、舌が絡み合う。その感触に朦朧としながら、秘部に与えられる過ぎた刺激を懸命にいなそうとする。  だがグレアムの指先は、そんなサギトの努力を突き破るように蠢いて、サギトの腰は跳ね、震えた。  サギトの一番弱いところを、絶妙な力加減でくにくにと押された。  サギトはグレアムから唇を離し、耐え切れずに嬌声をあげた。 「あっ、あっ、あっ!はっ……、あっ、んぅっ!」  サギトの屹立した中心からは、透明な蜜がしたたっていた。 「乱れるサギトはすごく綺麗だ……」  ため息混じりにつぶやきながら、グレアムは胸の小さな桃色に舌を這わせた。  そしてもう片方の手でサギトの前をしごき始める。  サギトの屹立はとっくに張り詰め、ちょっと触れられるだけで中身が溢れそうだった。 「やっ……、触……るな……」  触れられたら達してしまう。こんな早く達するなんて恥ずかしい。だから拒否の言葉を漏らしたが、それが本気でないことは声音から明らかだ。  グレアムはサギトのぬるつく反り返りを、慣れた手つきで揉みしごく。  中の弱いところをこねくりながら。胸の粒を舌先でもてあそびながら。  体中の敏感なところを同時になぶられ、快感の電流が走りぬけた。(あらが)いがたい熱に下半身を持っていかれる。 「あっ、んっ……!」  羞恥に顔を赤らめながら、白くどろりとした液体がサギトの中心から吐き出された。それはサギトのなめらかな肌を淫らに汚す。 「いっぱい出たな」  サギトの胸に散らばった白いそれを、グレアムが愛おしそうに舐めとった。 「う、俺ばっかり……」  達してしまった。こんなに早く。恥ずかしそうなサギトを見下ろし、グレアムは微笑んで熱い吐息を漏らした。 「俺ももう限界だ……」  グレアムはサギトの体をうつぶせにさせた。サギトの腹を持ち上げて腰を浮かせ、割れ目に硬いものをあてがう。  シーツに顔を伏せながら、サギトの胸が高鳴った。精を吐いたばかりなのに、サギトの体の火照りは去っていない。  熟れた穴が卑猥にひくつく。貫かれたい、と体が素直に期待してしまっていた。  熱の塊が、サギトにずぶりと押し込められた。  彼の形に穴が広がり、サギトはグレアムを飲み込んでいく。欲しがっていたサギトの穴は、挿入に(よろこ)び彼をしゃぶるように蠢いてしまう。自身のそんな反応があまりに猥褻でいたたまれない。  グレアムが耐えるようにうめく。 「くっ、すごい、お前ん中……」  ずぶずぶと奥まで沈められた。サギトの中にグレアムの灼熱がある。自分の中を彼の情熱でいっぱいに埋められ、サギトの心は恥じらいながらもじんじんと痺れた。    先端まで引き抜かれ、また一気に突かれた。  その圧と熱にサギトの背中が震えた。 「はっ、ああ……っ!」  グレアムが腰を緩やかに揺すぶり始める。揺すられるたびにサギトは気持ちよさにとろけた。  下腹部が温かい。とても気持ちがいい。  グレアムが腰を揺すりながら、後ろからサギトの胸に手を回して、そこにある桃色の真珠のようなものをつまむ。 「やっ……それっ……だめっ……」  挿入されながら胸をいじられることに、サギトは弱い。いじられるたびにきゅっと後孔を締め付けてしまう。  グレアムが締め付けの刺激をこらえるように、熱く息を漏らす。 「サギトの可愛い乳首と可愛い穴は連動してるんだよな……」 「へ、変なこと言うな……っ」 「どっちも全部、俺のものだ。サギトの体中全部、俺の宝物だ」 「っ……」  艶めいた甘い声音で言われ、サギトは言葉に詰まる。くりくりと乳首をもてあそばれ、幾度もグレアムを中で締めてしまう、卑猥な穴。その度にグレアムが堪えるように息を漏らす。その吐息にも乱される。 「やっ……、ああ……っ、んっ、あっ、あ……っ!」  グレアムはサギトの上半身を持ち上げて、自分の上に座らせた。  しっかりと結合したまま。 「えっ、あっ……」  グレアムのものを飲み込んだまま、グレアムの上に座っている。  自らの体重で、グレアムの杭が奥深くまで突き刺さった。根本まで穿たれて、その大きさをはっきりと感じた。動かしていないのに、ただグレアムをそこに埋めているだけで、サギトの体は快感を感じてしまう。 「この体勢、嫌か?」  背後からグレアムが問いかける。  サギトの細い背中は、グレアムの硬く分厚い筋肉質な体とぴったり密着していた。  包み込まれるような安心感。 「う、い、嫌じゃないが……」 (そういえばあの時も……)  初めてグレアムに「抜き方」を教わった時のことを思い出した。あの時もこうやって彼に背中を包み込まれていた。 「一緒だな、あの時と」  グレアムの吐息がうなじにかかった。彼も同じことを思い出したようだ。サギトは赤くなってこくんとうなずく。  でもあの頃よりグレアムはずっと立派な体になっていて、自分との体格差も開いていて。  まるで男女のような体格差だ、と思ったら、なぜか身体中が沸騰しそうなほど熱くなった。  グレアムがゆっくりと腰を上に突き上げてくる。  同時に、サギトの体を抱きこんで、その手が体の前側を撫でさする。柔らかい太ももの内側を掴んでもみしたぎ、胸の粒をつまんで回し、また質量を取り戻したペニスを握られた。  サギトはたまらず嬌声を上げる。 「んん……っ、や……ぁっ、あっ!」  グレアムの先端が、サギトの一番感じる部分を突いた。  サギトの体がびくりと仰け反る。  グレアムの唇がサギトの耳を食んだ。サギトの耳を舐めて濡らしながら、囁く。 「ここか」  喜色をにじませた、少し意地悪な声。サギトは息を詰める。 「や……、やめ、ろ……」  次の瞬間、その部位への容赦ない責め立てが始まった。 「ひゃっ……!あぁん……っ!ぁっ、あぁー……っっ!」  サギトは喉をさらして身もだえする。不安定な体位でくねる身体を、後ろからグレアムがしっかりと包んだ。  突かれながらいじられるサギトの分身は、もう完全復活し、第二の絶頂に向かって張り詰めている。 「んっ、はっ……、あっ……!ま、また……!」  サギトが涙目で訴え、グレアムははあはあと獣のような息遣いで、その腰の動きを思い切り速めてきた。  欲望をむき出しにして荒々しく突き上げられ、サギトの心も体も、もうぐちゃぐちゃだった。 「ぁっっ!あっ、あっ、あっ、ん……っ、ああ……っ!」  幾度も幾度も、乱れ打つように穿たれ、やがて。 「サギト、愛してる……っ!」  サギトの中で、グレアムの欲望が決壊した。勢いよく注ぎ込まれ、サギトは身を震わせながら、二度目の射精を迎えた。中で溢れるグレアムの精の感触に恍惚となりながら。  吐き出し切ったサギトは、まだ繋がったままくたりと、グレアムに背中から寄りかかる。倒れこむように。グレアムはそんなサギトを抱きとめ、後ろから頬ずりをして来た。 「二度もイっちゃったな……」 「お、お前のせいだ」 「エロいサギトを二度も拝めて幸せだ」 「俺は体力がないんだ……」  徹夜明けで連続二回は、正直キツイ。 「おっさんみたいなこと言うなよ〜」 「お前が元気すぎるんだ!」 「よし、この後デートの続きするぞ」 「は?」 「今日はまだ終わってないぞ!まさかデート中だってこと、忘れてたなんてことはないよな?」 (……忘れてた)  明日から砦だというのに大丈夫なのか、騎士団長が。 (体力馬鹿め)  サギトは、やれやれと微笑んだ。  幸せそうなグレアムに、いつまでも頬ずりをされながら。 ◇ ◇ ◇

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