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「どうして今日、誘ってくれたんですか?」  ラーメンをすすりながら尋ねる。たしかにおいしい。ちぢれ麺にスープが絡む。少ししょっぱいが、今日は暑くてたくさん汗をかいたからちょうどいい。ラーメンを食べながら、自分の体がどれだけ塩分を欲していたか気づかされる。 「どうしてって……。笠原とゆっくり話してみたかった。それじゃ、理由にならない?」  吉見がレンゲを持ち上げる手を止めた。透もそれに合わせて動きを止める。ラーメンのスープに向かって、言葉を落とした。 「俺と。どうしてそう思ってくれるんですか」 「同い年だから。それと、今日はなんだか落ち込んでいそうに見えたから……」  透は目を見開いた。いつも通り振る舞えていたはずだった。今日は午前中得意先を回り、午後からはずっと会社にいたが、社内の誰からも「どうしたの」とは聞かれなかった。それなのに、数分話しただけの吉見が気づくなんて、どうして。  透は口角を上げ、明るい声を出した。 「彼氏にフラれたんすよー」  ――エアコン壊れたから暑い、耐えられない、つって。  続けようと思った。言葉に詰まった。まずい、「雨降ってたのに傘忘れちゃって」みたいなテンションで喋りたかったのに。 「彼氏? 笠原、男もイケる口?」  吉見が片眉を上げた。からかうような口調だった。重たい話にしたくない透にとってはありがたい。 「というか俺、男しかイケない口っす」  軽口を返す。 「へえ、なるほどね」  吉見がぼそりと呟いた。 「ちなみにどっち?」 「抱く方。……で合ってます? この質問の答え」 「ちょうどいいね」  会話が噛み合っているのか定かではない。 「なにがです?」  吉見は唇を緩やかに引き上げただけで、なにも答えなかった。透がそれが意味するところを知ったのは、ビールをすすめられるがままに飲み、べろんべろんに酔っ払ってからだった。

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