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ストーカー

先を歩いていた尊が、急に立ち止まり、その肩は小さく震えていた。 「・・・どうした? 入らないのか・・・・・・!」 急に立ち止まった尊の顔を見ると、青白く血の気は引いていた。 一体・・・何が??  尊の視線を辿ると部屋の玄関には、白く生臭いモノがかけられていた。 ドアノブには、使用済みのコンドームが中身入で括り付けられていた。 ドアポストの中にも、同じ様に汚された尊の写真や使用済みのコンドームが入っていた。 「!! ・・・見るな。あれ・・・お前の部屋か?」 手にしていたスーパーの袋が落ちる。 そのまま、東堂に庇われる様に抱きしめられ、しがみつきながら尊がうなずく。 すぐに、大家と警察に東堂が連絡してくれた。ポストの中に合った白い封筒も警察に提出した。中に入っていたのは、東堂とキッチンでキスしてた写真と・・・ 『 許 さ な い 』 と書かれた、メッセージカード 警察に色々と話を聞かれていた間も、ずっと尊の体は震えていた。 それにこの様子だと、尊はストーカーがいる事は知っていたのか・・・? 「・・・大丈夫か?・・・これ、一体いつからだ?」 警察に見せられた汚された写真には、明らかに今よりも少し若い姿の尊が写っているのも有った。東堂が震える背中を撫でながら、あやすように聞いてきた。 少ししてやっと、落ち着いてきた尊が話始めた。 「・・・、この一年位かな・・・?? 最初は、白紙の手紙で・・・。」 「警察には?」 「何度も相談したけど・・・、ここだとこんな事は日常茶飯事だから、それに変に引っ越すと何されるか解らないって言われて・・・・。」 「そっか・・・、怖かったよな。けど、もう大丈夫だから・・・」 そう言って、東堂が尊の肩を抱き寄せる。警察は、尊の部屋の中を調べていた。その様子をマンションの下で、植え込みに座りながら尊は呆然と見ていた・・・。 結局その日は、かなり遅くなったが、おじさんに迎えに来てもらった。 「ミヤ君!! 警察に連絡貰って・・だ、大丈夫!?」 「う、うん。 あ、あの・・・おじさん・・・。」 ずっと、尊の肩を抱いていた東堂が、走ってくる姿を確認すると、尊が紹介するより先に挨拶をした。 「あ、あの先日電話で話をさえて頂いた・・・東堂です。」 東堂の名前を聞いて、思わず胸ぐらを掴んでしまう。 「!テメーがついてながら!!!! 尊に何かあったらただじゃおかねぇって言っただろうが!!!!!!」 東堂は冷静に掴まれた手に、自分の手を重ねおじさんの顔を真っ直ぐ見る。 横から、慌てて尊が割って入る。 「ちょ! おじさん!!東堂は関係無いから!!!」 それでも、東堂は引く事もなく、答えていた。 「・・・安心してください。俺が宮嶋を絶対守ります。」 「・・・。」 おじさんも、その声を聞いて掴んでいた手を離す。  尊が心配そうに東堂に抱きついていた。 それに、遠くからも尊を労るようにしている様子は見えてた。 彼が、尊を傷つける事はない。 そうわかっていても、思わず八つ当たりしてしまったのだ。 今まで、自分が親友の代わりに守ってきたのだから・・・。 少し、悔しくも思ったが、2人の様子に安堵もしていた。 「尊も、安心して。絶対に、犯人捕まえるから・・・。」 そう言って、どちらとも無く唇が重なる。 軽く何度もついばむ様なキスから、徐々に深くなるそれを、おじさんが割って入った。 「おおおおおいい!!!!! ここ、路上!!そして、おじさんもずっと居たからね!!! 2人とも!!!」 「「!!」」 「その、忘れてた!!って顔、やめて〜。ミヤ君、おじさん泣いちゃうよ?迎えにきたのにおじさん、泣いちゃうよ??」 「ご、ごめん・・・。つい・・・。」 「ほら、今日はおじさんと帰ろ? 」 そう言って、おじさんが手を差し出した。 「けど・・・。」 思わず、東堂の顔を見る。 こんな面倒な事に巻き込んでしまったせいで、もう会ってもらえないかもしれない。 そんな不安が顔に出てしまった・・・ フッと笑って、東堂が尊のおでこにキスをする。 「俺は、ちょっと警察に話もあるから、おじさんと一緒にいてくれる方が安心する・・。そんな顔するなよ・・・。また連絡する。」 東堂は、2人を見送り、マンションの方にいる警察の方へ向かった。 現場にいた警察の1人に声をかけた。 「すいません。犯人の残した証拠は、DNA検査に回したんですよね?」 東堂に声をかけれて、面倒臭そうに対応をしたのは、尊が何度か警察へ訴えた時の担当者刑事だった。 鑑識が部屋を調べてる間も、ジロジロと尊の事を舐める様に見ていた。 東堂が側にいる時もそれは止まる事はなかった。 それどころか、ニヤニヤと厭らしい顔をしながら尊に何度も犯人の残した物を見せていた。 尊がおじさんと先に現場を離れてからは、明らかに態度が雑になり今も東堂に対して面倒臭そうに対応していた。 「はぁ!? こんな事、Ω地区(ココ)じゃ、大した事件じゃねーんだよ!! 素人は引っ込んでろ。 大体、あのΩも前にも署にきたけどよ〜。こんな事される様なΩなんざ、禄でもねーんだろ? お前さんも、どうせあっちの具合がよくて一緒にいるんだろ?話聞いてる間中ずっと、イチャイチャしてましたしねぇ〜。それとも、案外お前が犯人だったり〜?」 ニヤニヤと、ハンドサインで尊の事を馬鹿にしていた。 今まで、冷静に対応していた東堂の額に血管が浮かび始める。 「・・・お前、名前は?」 「あぁ? 何だってんだ、お前如きに、何でそんな事を言わなきゃならねーんだよ!! Ωなんか、ただのオナホだろ!! お前のも、ぶっかけられてあのビッチΩは喜んでんじゃねーのかよ?」 手を上下する動作をし始めた刑事に、東堂は言うよりも先に体が反応していた。 ドン ガハッ・・・ 刑事の首元を東堂の腕が固定する。 「もう一度、侮辱する様な事を言ったら、この場で喋れなくしてやる。」 固定された手に力が入る。指先が食い込み始める。 気道が圧迫されはじめ、東堂が本気だと伝わったのか刑事の顔がみるみる青ざめる。 「わ・・・わかった・・・。くっ・・・くる・・・しぃ・・離せ・・・。」 その言葉を聞いて、力を緩めるが、そのまま手が首元に置かれたまま刑事の胸ポケットから、警察手帳を見つけIDを読み取る。そこに、自分の名刺を入れ戻して手を離した。 「あれを、すぐにDNA検査に回せ。結果をすぐ連絡しろ。いいな?」  「・・・な、何で、オレがそんな・・・」 苦しさに、尻餅をつきながらもまだ悪態をつく ドンっ 勢いよく、刑事の顔面横に東堂が足をついた。 「次、その口が余計な事言ったら、顔面潰すぞ。」 「・・・は、はい。」 その返事に、足を下ろし東堂は大家の元に行った。 「監視カメラ? ええ、あるわよ。」 チラチラと東堂の顔を見ては、値踏みをしているのが伝わる。 この大家はわかり易く、αに媚びるタイプか・・・。 「・・・少し、見せてもらってもいいですか?」 先ほどの刑事に見せた顔とは違い、笑顔を見せながらも対応するが、大家の値踏みにどんどんと東堂の態度は冷えて行った。 「見てどうするのよ。お宅、警察か何か?」 はぁ・・・。 財布から、札を何枚か抜き大家に握らせた。 「・・・見てもいいですよね?」 「鍵はポストに入れておいて頂戴ね〜。」 そう言って、ビデオのリモコンを置いて大家は管理室を出て行った。 ・・・、あの大家。 この事件が片付いたら、尊には引っ越してもらった方がいいな。 犯人の男がマンションに、入ってきた時も金をもらって大家は、ここには居なかったんだろう。 付けられていた監視カメラの映像は一日事に削除されるタイプらしく、今日よりも前のモノは残っていなかった。それでも、玄関にかけられていた体液がまだ乾燥してしていなかった事から、数時間前の事だと推測し、録画を巻き戻していく。 「・・・こいつ・・・。確か・・・。」 ビデオに映った不審人物は、メガネに帽子、マスクと顔を隠していたが、その目に東堂は、見覚えがあった。 むしろ、忘れる事は無かった。

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