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ストーカー2

あの日、俺は図書室に行った。ただ、一度、起きているあいつに会ってみたかった。 そこで、この男に出くわした。 「君、彼に何か用かい?」 図書室の入り口で中に入ろうかどうしようかと、悩んでいると後ろから声をかけられた。 その声に、振り向くと、いつも受付にいる優等生メガネが立っていた。まるで、汚物でも見るような目でジロジロと見られる。 「いや・・・別に。」 「そう! ここは君の様な生徒がくる場所じゃないから、さっさと扉の前から、どいてくれないか?」 手に持っていた鍵で、ドアを開けようとメガネに体を押される。 そんな事、言われなくてもわかっている。 自分でも感じていた事を指摘され思わず頭に血が上ってしまう。 「な!!!」 反射的に、メガネの首元を締め上げてしまう。 「は、離したまえ・・・。宮嶋君に見られるぞ。」 思わず、その名前に反応してしまう。 そんな様子をメガネは見逃さなかった。ニヤニヤしながら、こちらを見る。 自分が、何の為にここにきたのか、このメガネは見透かしていた。 「!! お前・・・。」 「可哀想な君に、一つ教えてあげよう・・・。」 首元を直しながら、不適に口元を歪めながら伝えた。 「・・・なんだよ。」 「宮嶋君から相談されててね。君の様な柄の悪い生徒に付き纏われて怖いと・・・。 ああ、けれど・・・そのお陰で、僕と彼は付き合うことになったから、僕からはお礼を言っておこうかな。 可哀想に、君の名前聞いただけで、彼震えててまるで子ウサギの様で・・・ああ、これ以上は・・・ふふ・・・・」 まるで、哀れな男を見ているかの様に。けれど、その声には東堂を馬鹿にしている様子が含まれていた。 「!!」 思わず、言われた言葉にカッとして、壁にメガネの男を打ち付けていた。 ドン 「・・また、暴力か・・! はっ・・。 殴ればいいさ。宮嶋君に手当てしてもらうだけだしね・・・。」 苦しげにそう言う男の顔は厭らしげに笑みを浮かべる。 「!!」 衝動的に腕を振り上げるが、そのまま拳を下ろした。 「・・おや、殴らないのか? 残念。彼に手当てしてもらえるチャンスだったのに・・・。 もう、彼のそばに近寄るはやめてくれ。 αはαらしく、Ωの尻でも追いかけてればいいだろ。こっちはβはβ同士仲良くしてるんだからさ。」 メガネを指先で直しながら、笑みを浮かべて東堂のことを見た。 「クッソが! こんなとこ、二度とこねーよ!!」 β同士だから・・・ クッソ・・・・。  αはβと番ことなんて無い。そんな事はわかっている。 αとΩなら、男同士、女同士でも子供を作る事ができるが・・・、β同士だと異性婚でなければ子供を作る事なんて出来ない。それでも、彼らは自由に恋愛をしている。    ・・・・あんな男が・・・あいつは、いいのかよ・・・。 男同士で恋愛するくらい・・・。 それでも、自分よりはまともなのかも知れない・・・。それなら、自分は近寄らない方がいい・・・。そう思った。それでも、諦めきれずあの場所で過ごした。メガネが卒業した後も、もし言ってた様に、本当に怖がらせてたらと・・・、側に近寄ることが出来なかった。  まさか・・・あの時の、メガネ・・・・か? けど、あいつはβ地区に居たんじゃ? ビデオの画像をダビングし、東堂は管理室を出た。 尊達は家に着くと、温かなハーブティーをおじさんが尊の為に入れてくれた。 「はい。これ飲んだら、少しは落ち着くといいけど・・・」 「おじさん・・・ありがとう。」 ほのかに蜂蜜の甘さが染み渡る。思ったよりも体が冷えていたらしく、じんわりと暖かな熱が広がる。 ぐぅぅぅぅ〜 体が温まった事に、ホッとした尊のお腹がなった。 「今、パスタを作るよ。何が良い?」 「やった! それなら・・・カルボナーラ!」 「はいはい。あ、そういえば、なんかミヤ君の知り合いが昨日、店に来たらしいんだけど・・・。」 「・・・知り合い・・・ですか??」 「・・・・・」 カップから顔をあげて、おじさんの方をみる。 尊のその顔に、おじさんも特に追求すること無く話を切り上げた。 「まぁ、今日みたいな事もあるし、心あたり無いなら、バイト君たちにも気をつける様に伝えておくね・・・。」 「おじさん・・・本当にありがとうございます・・・。」 俯くと膝に、小さく染みが出来た。 「うん・・・何があっても、おじさんも君を守るからね・・・。」 出来立てのパスタを尊の前に置き、そのまま尊の頭を撫でた。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 畜生、畜生・・・ ザクザクッ αが何様だ!そんなにお前らは優秀なのか!! あの時も、あの時もだ・・・。 いつも、αが邪魔をする。 特にあいつは、僕の目の前で彼を連れ去った・・・。絶対に許さない。 ズタズタにカッターナイフで裂かれた写真 許さない許さない許さない・・・ βだった彼が、Ωになって僕の前に現れた。 カルテの中に、彼の名前を見つけた時は足元から崩れていく感覚だった。 あんな動物の様なΩに彼がなってしまった。 裏切られた気がした。それでも、彼が診察の度に泣いているのを見かけてからは、僕が守ってあげないといけない使命にかられた。 引き出しを開けると、中にはびっしりと日付の書かれたビニールに入れられた、使用済の手袋、綿棒、写真が几帳面に並べられていた。カバンの中から、新たに今日の日付の入ったビニール入りの綿棒を取り出す。 チャックを開け、ビニールの中の匂いを嗅ぐ 「ああ、あの日のも欲しかったのになぁ・・・。マッチングなんてまだ彼には早いのになぁ・・・。はぁ・・・はぁ・・・ああ、彼の味がする・・・。」 袋の中から取り出し、それを口に含む。徐々に、立ち上がりだした自身を扱き始める。 口の中の綿棒を思わず怒りで噛んでしまう。 あんなに大事に見守ってあげたのに。 けど、僕は優しいから、彼がいつもみたいに泣いて許しを乞うならチャンスをあげよう。 ふふふふふ・・・ はぁはぁ……、次に会える日が楽しみだな びゅるっぅ 白濁したモノが、写真の中の尊にかけられる。 あぁ・・・僕の精子を君にたっぷり注いで、ちゃんと僕の子供を産ませてあげるからね。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ カーテンを開け、次の患者の用意をしている看護師に声をかける。 今日の看護師は、若い女オメガの新人。学生気分が抜けないのか、気を抜くとすぐ言葉にでる。 「はい? 先生どうかしましたか?」 「いや・・・、最近、診察終わりに医療廃棄の消耗品がなくなってる気がするんだけど・・・。持って帰ってたりしないよね?」 「え〜、何ですか?それ〜!! 気持ち悪〜。」 「・・・気持ち悪・・・か・・・。」 「だって、医療破棄の消耗品って、内診で使った綿棒とか手袋ですよね? そんな、患者の体液の着いた物どうするんですか!!キモッ!! って、先生・・・どうかしたんですか?」 「ああ、ちょっと気になっただけ。 僕の勘違いかな。」 そう笑顔で言うと、看護師も仕事に戻った。 机上のカレンダーを確認し、カルテを見る。 明日は、ミヤ君の定期検診か・・・。 あの日から、もう1ヶ月。彼らから、連絡は無い。 ・・・明日、2人で来るのだろうか? あの子との出会いは、彼にとっては予想外の事だっただろう・・・。 それでも、あの子はちゃんと自分と向き合っていた。

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