11 / 27

東堂の過去(1)

あの日以来、オレは夜のバーには出ていない。 昼は、おじさんのカフェでキッチン業務だけやっているし、あの部屋にも帰っていない。 東堂とは、あんな事があった後も、予想以上に普通に付き合いを続けていた。 むしろ、あの日以来東堂が優しい・・・というか・・・。 「尊、待たせたか?」 「いや、オレもさっき、来たとこ。」 Ω地区とα地区の間のカフェで待ち合わせるのが、あの日からオレ達の定番。 「なら、良かった。 尊、会いたかった。」 東堂は挨拶と一緒に、尊の唇に軽く口付ける。 東堂と会う様になって、もうすぐ1ヶ月。 今まで、そういう関係になった人がいないからこれが普通なのかも解らないけど・・・。 会うたびにキス。隙あらばキス。一度、その日にされたキスの回数を数えてみたけど・・・10回を超えた辺りで、恥ずかしくなって数えるのは止めた。 本当、高校時代に耳にした噂や、イメージと違うんだよなぁ・・・。けれど、東堂は沢山のキスはしてくるが、一度も東堂は「噛みたい」とは言ってこなかった。 フェロモンに発情して、関係を持ったのに・・・ もしかして・・・オレのΩフェロモンは、東堂には効かないのかな・・・? そんな考えに、少し胸が痛んだ。 けれど、今は東堂が自分を抱きしめている事に、尊はそっと目を瞑った。 あの夜から、何度、体を重ねても、奥に挿入しても、いつも夢なんじゃ無いかと不安になる。 朝、目が覚めた時に自分の腕の中に尊がいるのを確認すると、安心する。 けれど、αとΩ。 番にならない限り、Ωは発情期になって仕舞えば、恋人が居ようが、家族だろうが、ただαを求める。 それがΩの本能。 けれど、ただ番になったところで、運命の・・・・ 魂の番には、あがらう事は出来ない。 基本的には、Ωの方が捨てられる事が多いが、αでも運命に選ばれないと捨てられることをオレは嫌ってほど知っている・・・。 捨てられたαは、新しい番を持つ事は可能だけど、プライドの高いαは、捨てられた事実に、心を壊してしまうのもいる。 オレの父は、αでも普通の会社員だった。そんな父に、そこの社長令嬢だったαの母が、親の権力を使い、恋人の居た父との結婚を無理やり進めた。けれど、父は権力に屈せず最後まで首を縦には振らなかった。 そんな父に、母は苛立ちを募らせ、父の恋人を呼びだし無理やり、誘発剤を打ったのだ。 それも、α地区のど真ん中。 だけど・・・・、結局母は、父を手に入れる事はなかった。 その日、母の行動を怪しんでいた父は、恋人のあとをつけていた。そして、母の目の前で、ヒートにのまれて、恋人だったΩの首筋を噛んで番にしたのだ。それでも、母は父との結婚を諦めなかった。むしろ、自分の所為でそんな事故を起してしまったと・・・その時の子供を自分たちの子供として育てたいと言い出したのだ。その頃は、まだΩの地位は今の様に守られてなく、上位αの母にはもΩは虫けら同然、母よりも下級のαだった父も同様だった。父も、子供を盾に母との婚姻に応じたが、 そうまでして、手に入れた父との婚姻生活が、当然上手く行く事なんてなかった。 その後、父と番になったΩは、妊娠中に不慮の事故で亡くなった。それ以来・・・父は、Ωの愛人を何度も作った。それでも、母は別れる事も無く。それどころか、愛人たちは皆、父との子が産まれる前に、父の元を去っていった。 その度に父が自分の元に戻る事を母はいつしか心の拠り所にしていた。けれど、それもオレの産みの母と父が出逢って、終わった。 2人は、出逢った瞬間に、恋に落ちすぐ番になった。 魂が惹かれあった運命の番を見つけたのだ。 そして、父はオレがαと診断結果が出た日に、オレを置いて帰らなくなった。 父は、今までのΩ達に母がしていた事を知っていたのだ。 そんな母の元に残されたオレに、母の矛先が向いたのは精通を迎えた頃だった。 あの日、寝る前に出された水を飲んだ所為で・・・・ オレの地獄は 地獄に落とした、張本人の父が助け出すまで 続いた・・・。 はぁ・・・はぁ・・・ 喉が焼ける様に熱い。体が・・・熱い・・・。 「・・・の、喉が渇いた・・・。み、水・・・。」 譫言の様に、水を求めると口元に冷たいものが当てられる。 その冷たさに、無我夢中で口を開き、その物を受け入れると、冷たい水と共に、生暖かなモノが自分の口の中に入り込んできた。口内を激しく動き、息苦しくなって目を覚ます。その目に飛び込んできたのは、口の周りを赤く汚した全裸の母。それも、自分の上に、馬乗りにでこちらを見ていた。 「ひっぃ!! 母さん・・・な・・何・・んん・・。」 そのまま、両腕を押さえつけられ下着を脱がされ、未熟なそれをまるでおもちゃの様に扱い、赤く汚れた唇で舐めあげていく。与えられる、初めての刺激に自分の意志とは関係なく、硬度を増していく様子を嬉しそうに母の真紅に彩られた唇が咥える。その光景に、恐怖しかなかった。 なのに・・・体は、熱を持ち始める。 「うふふふっ。こんなに元気になって、いい子ね。さぁ、ママを喜ばせて頂戴。」 母親自らの指で、女性の陰部を見せつける様に広げ、期待に溢れる蜜を、未熟な陰茎に垂らしながらそのまま中に押入れた。 それも、何度も何度も、グチュグチュと音を立てながら、自分を置いていった父に見せつけているかの様に・・・・ 「や!! やめ・・やめて!! 母さん!! ヤダヤダ・・・!!!!!」 暖かく、絡みつく様に動かされるそれは、自分の感情とは別に射精を促した。 「ああ、いいわ!! そう、もっと・・あ、ああ。 もっとよ!!あなた、最高だわ・・・。  何、その目は!!! もっと、腰を動かしなさい!!!! 」 バッシッツ 今まで、親に手をあげられた事なんて無かったのに、腰を動かすのを拒めば、何度も何度も母が望む様に動かなければ、頬を打たれる。  「ああ、そうよ・・・そう。できるじゃない。さぁ、早く!! 中に出して頂戴。」 激しく動物の様ただ腰をふる 何度も何度も・・・ 「そう、良い子ね。 もっとよ!! まだ、出るでしょ!!さぁ・・・全部全部よ!!! 早く中に出しなさい!!!」 毎晩の様に繰り返される、その行為を最初は拒否していた。 けれど、拒否をすれば食事ももらえず、時には殴られ・・・。 たまに、与えられた食事には、興奮剤を入れられる。酷い時は、朝からそれは行なわれた。 何度も繰り返されていくうちに、感覚はどんどん麻痺していた。 母に従ってさえいれば、この苦行も早く終わる。 母も従順に従えば、学校にも通わせてくれる。 学校に行けば マトモな食事が出来る、あの行為からも逃れる。唯一、心が安らぐ場だった。 その一心で、学校に行きたくて、母の望む様にしていた。けれど、母の行動はエスカレートしていく一方だった。成長と共に、父に似始めたオレを、四六時中監視する様になった。 遂には、学校にも通わせて貰えなくなってしまった。 けど、3年の夏・・・突然、悪夢は終わった。 最初は、進級以来、登校してない理由を体調不慮を信じていた学校側だったが、進学の事で家庭訪問に来た担任の先生が、母の態度を不審に思い、父へ連絡をした。 そして、母がしていた事が全て明るみになった。 その後、母は祖父の指示で施設に入れられ、自分は父に引き取られ産みの母と暮らした。 けれど、夜になると母の気配に眠れなかった。 そんな夜、喉の奥が乾くのを感じ水を飲みにキッチへ向かう途中、父と母の声が寝室から、声が聞こえて、少し開いていたドアの隙間から、見てしまったのだ。 Ωとαのセックスを。 お互いが激しく求め合い、愛し合っている行為は、自分が強要されていたそれとは全く違った。 お互いのフェロモンを感じ、混ざり合い本能から求め合う様子に、ショックを受けたのと同時に自分にもそんな相手が欲しい。 そう、強く思った。 けれど、そんな2人の側にいるのは精神的にきつく、高校進学等を条件に家を出る事を許してもらった。 けれど用意された部屋での、1人寝は母の気配を思い出させ、結局1人で眠る事が出来なくなっていた。 最初は薬で無理やり眠っていた。 けれど、すぐに限界がきた。 結局は、母の幻影から逃れられず、その結果、母と同じ事をするようになっていた。 ただ、幸か不幸かαってだけで、近寄ってくる女は沢山いた。 お陰で、薬に頼らないで済む様にもなったけど・・・・、何も満たされる事は無かった。

ともだちにシェアしよう!