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フェロモン

だんだんと深くなるキス けれど、どこかいつもより優しい気がした。 「・・・ここでしちゃだめかな?」 そう聞いてくる声に、尊の反射的に首を上下に振っていた。 その反応を優しく見つめながら、尊をベットに乗せる。シングルサイズのベットは狭くいつもよりも東堂を近くに感じられた。まるで、壊物を扱っているかのように、東堂の手が尊の顔を優しく撫でる。 撫でるその手が気持ちいよくて、思わず、その手にすり寄ると東堂が小さく笑った気がした。 そのまま、耳元で囁かれれば尊はそれだけで体の奥から熱が灯る。 「 尊・・・」 チュッ 耳朶を軽く甘噛みされながら、キスをされれば答えるよりも明確に真っ赤になった耳 少し恨めしそうな顔で東堂を見上げる。 「・・・・最近・・・しなかったから・・・もう、オレと・・・したくないのかと思った・・・。」 東堂の首に手を伸ばすと、楽しそうな顔で尊の近くにまで東堂が近寄る。 「そんな・・・、毎日だってしたいよ。」 今度は耳朶では無く、唇にキスが落ちる。 事件以降、おじさんが退院するまで、尊は東堂の部屋で過ごしていたが東堂が尊に触れる事は無かった。東堂なりに気を使ってくれているのも頭では理解していたが・・・。自分でも想像していた以上に気にしていたらしい。 触れられて嬉しい。 そう思うだけで、体が歓喜の声をあげた。 その瞬間、身体の奥から弾ける様に何かが溢れ出でた。 「み、尊!!」 ま、まさか・・・。 ゴクリとの自分の喉が鳴った。 うるさいくらいの耳鳴りがする・・・ 尊から、甘い香りが溢れる。潤んだ瞳で東堂を見上げれば、東堂が熱い視線と絡み合う。 歯が疼く 今すぐにでも、尊のあの白い頸に齧り付きたい衝動が沸き上がってくる。 尊も何か感じるものがあるのか、普段と違う異変に抑えきれない涙を滲ませながら東堂にしがみつく。 「あ・・・と、東堂・・・か、ラダが・・・」 んんん!!! 尊の言葉は東堂に飲み込まれる。 「ああ、尊・・・落ち着くまで、とことん付き合う・・・から・・・」 東堂にキスをされ、身体を触られる。 それだけで、軽く尊は達そうになる。 「あ・・・ああん!!」 尊の甘い声が漏れる度に、東堂の身体も熱を持っていく。 それと共に東堂からも、尊の脳が溶けるような香りが強くなる。 そこからの先の記憶は尊には無かった・・・。 目覚めると、腕や横になったままで見える場所の至るところに、東堂が付けたであろう噛み痕が尊の身体についていた。その多さに驚き、起きあがろうとする が・・・立てない。 え?? な・・・なんで・・・。 「・・・? ・・・あ“ ・・・え“•・・」 喋ろうと何とかするが声が・・・・ 出ない? な、なんで???  最後の記憶の中では、一緒に居たはずの東堂の姿を探すが、狭い尊のワンルームのどこにも居ないのは気配で分かった。  東堂? なんで、・・・いないんだよ・・・? 思わず寂しくなって、自分の身体を抱きしめる。 自分の腕に、東堂の付けた噛み跡を見つける。 あ・・・! 首・・・。 慌てて、自分の首を触る。 ボロボロになってちぎれそうになったネックガードが尊の首を守っていた。 その事に少し、残念な気持ちになっていた。 ・・・どうせなら、噛んで欲しかったな。 何で、いないんだよ・・・。 「東堂のバカ・・・」 思わず、こぼれ落ちた言葉に、部屋にいなかった男が答える声が聞こえてきた。 「・・・バカとは酷いな。」 「え? と・・・とうど?」 振り返ると、玄関に東堂が立っていた。 手に持っていた紙袋を、見せながら尊の側までいく。 身を捩りながら東堂の方を振り向くと、東堂が尊にキスをする。 カチャ 「え?」 新しい、ネックガードが尊の首に付けられる。                 東堂の手にボロボロになったネックガードが握られている。それを見て、尊は自分の首元をさする。明らかに、前の支給された物より質の良いそれに何とも言えない気持ちになる。 ・・・何でだろ・・・? 「・・・どうした? どこか痛むか?」 東堂の心配そうな顔を見ると、思わず首を横に振ってしまう。 「それなら、よかった。 食事買ってきたから食べようか。起きれる?」 尊の身体をゆっくりと起こしながら、ベットに腰掛けながら尊の身体を自分に寄り掛からせる。 水のペットボトルを尊に手渡し、紙袋から買って来たサンドイッチやスコーンを取り出す。 サンドイッチを食べながら、東堂の方を見ると見ると嬉しそうな顔をされる。 その顔にキュンと身体の奥がする。 なんか・・・東堂ってズルい。 お腹も満たされ、気持ちに余裕が出て来たのか自分の身体が綺麗になっている事や、寝ていたベットシーツが新しくなっている事に気がついた。 それに、さっき付けられたネックガードも、食事も全部東堂が尊が眠っている間にやってくれたんだと思うと、何とも言えない気持ちになっていた。 「尊、この部屋・・・残しておいておこうか?」 「え・・・?」 「色々と心配な事はあるけど・・・・、尊の両親が残した部屋だし・・・。」 「・・・東堂・・・。」 思わず、東堂に抱きついてしまう。 「み、尊?」 「ありがとう・・・・。」 「っそれなら・・・・」 抱きしめてきた尊の手に東堂が、自分の手を重ねる。 「けど・・・大丈夫だよ・・・。」 重なった手に尊が指を絡ませると、今度はそのまま東堂に握られる。 「それなら・・・、俺と一緒に暮らさないか?」 「・・・え? 東堂・・・?」 「・・・・っと、返事は急がないから、考えておいて欲しい。」 そう言って尊の頬にキスが落とされる。 東堂と一緒に暮らす・・・? ソレって、オレと番に・・・??  言われた言葉を反芻しながら、キスされた頬を思わず触れてしまう。 そんな姿の尊を見ながら、東堂は尊のボロボロになったネックガードを握りしめていた。

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