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繋がる 2

先に、沈黙を破ったのは尊だった。 「・・・オレに東堂がしてた事ってなに・・・?」 「・・・そ、それは・・・・。」 真っ直ぐ尊が東堂を見れば、罪悪感から視線を逸らしてしまう。 「・・・もしかして、オレが・・・」 逸らされた視線が、自分の方に向かない事にだんだんと辛くなった尊の視線が足元へと落ちていく。 「・・・」 「オレが、うまく発情出来ないのが・・・原因か?」 ずっと引っかかっていた事を尊が口にする。 「・・・・。」 無言を肯定と取った尊の言葉が止まらない。 「前に、血液検査したら、オレの体が発情しにくくなってるって・・・。オレ・・・Ωになってまだ・・・ちゃんとした発情もしたこと無いし・・・・」 「・・・尊・・・。それは・・・」 発情しないのは・・・・。俺が・・・・ 言わないとと思っているのに、言葉にできない。 そんな東堂に気づく事なく、尊が喋り続ける。 「せ、先生が、抑制剤飲んでるんじゃ・・・ないか・・って・・・けど、オレそんなの・・・・。・・・やっぱ・・・、オレみたいな欠陥Ωより・・・」 「・・・え?」 「もっと・・・ちゃんとしたΩが良くなったんだろ!?」 そう叫ぶように尊が言うと、俯いていた足元にぼたぼたと大粒の涙が落ちる。  「み、尊?!」 予想外の叫びに、驚いて東堂が尊の方を向くと視線を感じた尊が顔を上げた。 その瞬間に、滝の様に尊の目からは涙が溢れ出た。 いつも尊が見上げると、東堂と目があった。 それは、東堂が尊の事をいつも見ていてくれたから。  今は、ベットの上にいる東堂と見上げなくても目が合うのに・・・ 叔父さんの話の最中も、一度も見てくれなかった。 今日、やっと目が合ったのに・・・ 困惑した東堂の顔に、涙が止まらない。 「あ、あんな先輩に良いように弄られたオレなんかより・・・もっとちゃんとしたΩが・・・。ヒック・・・オ、オレみたいな・・・Ωと寝たって・・・ヒック・・・とう・・どうの事、ま・・・満足させてやれないし!! ヒック・・・ヒック・・・」 「えええ!!!? み、尊・・・ちが・・・ちょ・・・待っって・・・。」 慌てて、尊を胸元に抱き寄せると東堂の着ていた寝巻きが水気を含み始める。 「だって・・・り、スト・・・見てたし・・・。」 「・・・ああ、あれは・・・。」 「や・・やっぱり・・・、オレよりも・・・。」 「ち、違うから!!」 尊を抱き寄せていた腕に思わず力が入ってしまう。 「と・・・東堂?」 急に強くなった、腕の力に思わず東堂の顔を見る。 これって・・・あの時と同じ顔? 先輩が東堂に何か叫びながら連れていかれた時に見た顔と同じ様だった。 そんな東堂の顔を見たら、尊の涙も止まった。 「・・・東堂? 先輩が言ってた事と関係あるのか?」 東堂の顔に尊が手を伸ばすと、縋る様に東堂が頬を寄せる。 「・・・尊。俺は、お前が好きだったんだ。」 「う、うん・・・。」 何を今更、東堂は言い出しているんだろう・・・? 好きだった・・・・? だったとは? え?・・・過去形?って事は・・・ 今は・・・??????  行き着いた考えに、また止まった涙が出そうになるが、それは東堂の言葉で咳止められた。 「・・・もちろん、今もお前を手放したくない程・・・愛してる。」 「え・・・。」 あ、愛・・して・・・え・・・?!! 「けど・・・、怖いんだ・・・。」 「と、東堂?」 突然の愛の告白に尊の心臓は忙し鳴っているのに、東堂はどんどんを落ちていった。 「もし、尊に・・・俺じゃない運命の番が現れたら・・・って・・・。」 「え・・・?」 運命の番?  考えた事もなかった事を言われて、言葉が出てこなくなる。 確かに、Ωと診断されて時、貰った冊子に・・・・ 魂レベルで惹かれ合う相手がαとΩにはいて、たとえそれが既に番としている相手がいても抗えない存在。けれどそんな相手に会える事は稀で、βがΩに変わるよりも、βがαを産むよりも滅多にない事。 って、書いてあったような・・・・。 そんな事に、あの東堂がこんなに怖がっているのか? 店でαの客もいたが、殆どキッチンにいた尊にとって、ちゃんと交流をしたも東堂が初めてだった。 東堂が、尊のαの全てだった。 そんな東堂は、常に尊の事を一番に考えてくれ、外でもベットでもリードしてくれていた。二度の事件も全部、東堂が尊を助けてくれた。 尊にとって、ヒーローみたいな東堂が・・・ まだ見たことも出会ったこともない運命の番を怖い?? その理由が、両親の事だった・・・。 あの時先輩が、喚いていた意味が全くわからなかった。 それも、全て東堂は全部話してくれた。 母親との肉体関係の事 父親に運命の番が現れた事 それから、図書室での事・・・ 最後に、叔父さんが言っていた事の意味も 全部、東堂は話してくれた。 話終わって、東堂が尊の反応を不安そうに伺い見る。 抱きしめられていた尊に、東堂の心臓が、いつもより早く脈を打っているのが伝わってくる。 その音に、尊の心は落ち着いていた。 「それじゃぁ・・・、東堂はオレに抑制剤を飲ましていたのか?」 「あぁ・・・。そうすれば、運命の番に出会ってもヒートを起こさないんじゃないかと・・・思って・・・。けれど、先生にこのままだと尊が死ぬかもしれないって・・・・・・。」 ギュッと抱きしめられる。 「・・・もしかして、おじさんが入院してる時・・・?」 「ああ、あの事件の日。先生に連絡をもらって・・・。」 今まで、尊の食事に少しずつ混ぜていたのを止めたと白状した。 「それじゃ・・・、オレのマンションで・・・・その・・・オレの体が・・・おかしくなったのって・・・。抑制剤の効果が切れてたから・・・?」 「・・・多分。薬で抑え込んでいた反動だと思う。」 「!! 違う・・・、そんな反動なんかじゃ・・・だって、あの時・・・」 東堂に噛んで欲しいって、思った・・・。 抑制剤が切れた反動なんかじゃ・・・・。 初めて、キスしたあの日みたいに、何も考えられない位に東堂の事が欲しくて・・・目が覚めた時、側にいないのが寂しくて・・・。 けれど、きっと東堂は尊が心からそう言っても、信じられないんだと尊は本能で感じ取っていた。 それは、尊自身が両親から愛されて育ったからわかる感情なのかもしれない。 でも、東堂は違った。 母親から向けられたのは歪んだ愛情、執着。 守ってくれるはずの父親は、既に新しい守るべき存在を抱えて・・・ そんな東堂の唯一の癒しの時間が、あの図書室で尊が大切にしていた時間だった。 東堂の部屋で、見付けたあのCD 東堂があの時 聞いていたあの音・・・ 全てが、尊も忘れられる事の出来なかった高校時代の思い出・・・

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