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会うたびに好きになる 1
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朝起きたら、体がだるかった。体温を測ってみると、三十七度一分。微熱だ。ぼんやりとした頭で、健人さんにメッセージを送る。
『この辺でいい病院ある?』
すぐに既読がついて、電話の着信音が鳴り、スマートフォンを取り落としそうになった。画面をタップして電話に出る。
「もしもし。急に電話きたからびっくりした」
「どうしたんです?」
焦ったような健人さんが、一方的にまくしたてる。
「怪我? 風邪? それともどこか痛いですか?」
「熱出た。多分風邪」
一瞬の沈黙。健人さんがボソッと言う。
「僕のせいですね」
――健人さんのせい? 何かされたっけ? 最近会ったのは、えっと……三日前、看病しに行った時だ。合鍵をもらって、雑炊作って、それから……あ。キス。
その時のことを思い出して、かあっと体が熱くなる。
「ううん。俺のせい。キスしたのは俺だし」
「責任をとって、今からそちらに行きます」
電話の向こうで、健人さんが動き回っているような気配がした。通話しながら家を飛び出してきそうな勢いだ。
「えっ、俺の話聞いてた? 健人さんのせいじゃないってば。熱って言っても三十七度くらいだし、病院の場所さえ教えてくれれば一人で行けるよ」
「いいえ。心配です。悠里の家からだと、徒歩で十分もかかります! レンタカーを手配しますので、少し待っていてください」
「そこまでしないで! 十分くらい歩けるから!」
車は断ったが、病院まで付き添いをすると言ってきかないので、アパートで健人さんが来るのを待つことになった。
冷蔵庫から出した牛乳を飲みながら思う。
――熱があるって伝えたら、必要以上に心配されるって分かってたはずなのに、なんで健人さんに言っちゃったんだろう。俺、実は、そこまで頭が回らないくらい具合が悪いのかな……。
ちょっと体が重たいだけで元気なんだけどな、と腕をぐっと突き上げながら、深いため息をついた。
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