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会うたびに好きになる 3

  ※ 「食欲はありますか?」 「うん。お腹すいてきた」  病院と薬局からの帰り道、悠里の顔色が朝よりも良くなっていたので、スーパーでの買い出しに付き合ってもらうことにした。 「リクエストがあればどうぞ」 「家に冷凍うどんがあるから、それでなんか作ってほしい」 「分かりました。あったかいうどんにしましょう」  鶏肉、キャベツ、長ネギ、しめじ、卵を買い物かごに入れた。そのままレジに向かおうとした僕を、悠里が声で引き留める。 「健人さん、アイスも食べたい」 「分かりました。好きなものを入れてください」  アイス売り場に行き、かごを差し出すと、悠里がはにかみながら、アイスを二個入れた。この前看病に来た悠里が食べさせてくれたのと同じ、カップのバニラアイスだ。 「俺にもあーんして」  俯き加減でそんなかわいらしいことを言うから、スーパーの店内にいることを一瞬忘れて、ほっぺたにキスを落としてしまった。悠里が目をまんまるにして僕を見つめてきた。 「いっぱいしてあげますね」  耳元で囁くと、何を想像したのか、悠里の顔が真っ赤に染まった。   ※  悠里のアパートに戻って、持参したエプロンを身につけ、後ろ手で紐をリボン結びにする。「寝ててください」と言ったのに、悠里は僕のエプロンの紐をきゅっと握りしめて、首を横に振った。僕が動くと、紐をつかんだままついてくる。まるで、母親の後ろをついて歩く未就学児みたいに。 「健人さん」  うどんを煮るために鍋でお湯を沸かしていると、悠里にエプロンを引っ張られた。 「どうしました?」  鍋から目を離さずに答えると、悠里が僕の背中にぴたりとくっついた。 「火を使ってるから危ないですよ。離れてください」  悠里は黙って腕を回してきた。そのまま僕のお腹の前で両手の指を組む。絶対に離さないぞ、という意思表示のように見えて、戸惑った。  ――大抵、こういうことをするのは僕の方で、悠里はいつも、過剰にくっつきたがる僕のことをうっとうしがっているのに。  悠里が子供のように甘えてくることに驚く。  ――そういえば、この前熱が出た時、かなり心細かった。もしかしたら、悠里も体調が悪くてネガティヴになってしまっているのかもしれない。  そう考えて、尋ねる。 「不安なんですか?」  肩に乗っている悠里の頭が、ぐりぐりと動いた。悠里の髪の毛が僕の耳や首筋をかすめる。ぞわりと肌が粟立った。 「違う。甘えたいだけ」  腹に回った手に力を込められる。やることなすこと全てがいつも以上にかわいくて、心臓に悪い。このまま続けられたら、僕は悠里を押し倒してしまうに違いない。悠里は病気なのだ。絶対にいけない。平静を装って悠里に告げる。 「そうですか。でも、これから包丁を使うので、できれば離れていてくれると嬉しいです。悠里に怪我をさせてしまったら、僕は一生後悔します。甘えたいならあとでにしてください」 「うん、分かった」  悠里は僕の耳たぶに口づけをしてから離れた。発熱してしまったのではないかと思うくらい、体がほてった。

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