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会うたびに好きになる 4

 出来上がったうどんを部屋に持って行くと、悠里がベッドに転がっていた。寝息を立てて気持ちよさそうに眠っている。おでこに手を当ててみると、悠里がうっすらと目を開けた。 「んえ? けんとさん?」  僕がここにいることが不思議だとでも言うかのように、ふにゃふにゃとした声を出される。 「はい。『健人さん』ですよ。うどん、食べられますか?」 「たべる」  悠里がむくりと起き上がった。手の甲で、両目をぐしぐしとこすっている。今日の悠里は、幼い子供のように見えて、庇護欲をかきたてられた。 「ベッドに座ってください。食べさせてあげます」  箸でうどんを一本持ち上げてみせると、悠里がこくんと頷いた。悠里の顔に箸を近づけていく。悠里が口を開ける。その瞬間、箸からつるりとうどんが滑り落ちた。  悠里が、ぶはっと吹き出した。 「床に食べさせてどうするの?」 「すみません」 「俺の口に入るまで、ちゃんとつかんどいてよー」  肩を震わせて笑っている。その姿はいつもの悠里で、ほっとする反面、子供っぽくてかわいらしい悠里が恋しくもなった。  次のうどんは、しっかり悠里の口に入った。僕の手からものを食べてくれるのが嬉しくて、何度か繰り返したが、「健人さん、ネギばっか食べさせてくる! 食べたい具材を自分のペースで食べたい!」と、悠里に器と箸を奪い取られてしまった。  手持ちぶさたになり、自分の分のうどんをよそい、悠里の隣に腰掛けた。  悠里は口と手を動かし続けている。食欲があるみたいで何よりだ。じっと見つめていたら、「どうしたの?」と首を傾げられた。 「うどんをすする悠里をおかずに、僕もうどんを食べようかなと思っているところです」 「何言ってるの……?」  悠里の眉が顔の中心に寄った。また僕の「キモい」ところが出てしまったようだ。悠里が嫌がるからやめたいと思うのだが、自覚がないので直しようがない。 「すみません」  反射的に謝ると、悠里が呆れたように笑う。 「ま、そういうとこも含めて『健人さんらしい』から、いいんだけどね」  こんな僕も認めてくれるなんて、悠里は心が広い。 「悠里は優しいですね好きです」  一息で言い切ったら、悠里が笑い声を漏らした。 「ありがとう。俺も好き」  まっすぐ目を見て言ってくれる。 「うどんを食べ終わったら、アイス、あーんしてあげますね」  僕が微笑むと、悠里は嬉しそうに目を細めた。

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