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会うたびに好きになる 5
※
食器や鍋を片づけ終え、冷凍庫から取り出したアイスを手に、二人でローテーブルの前の床に腰を下ろした。
ふたを開けて、手元のアイスをスプーンですくいとる。
「はい、どうぞ」
僕は悠里の口にスプーンを近づけた。ぱくり、とスプーンをくわえこんだ悠里は、僕の顔を見て恥ずかしそうに微笑んだ。スプーンを抜き取りながら尋ねる。
「美味しいですか?」
「うん。健人さんも、あーん」
今度は悠里が自分のスプーンでアイスを食べさせてきた。成分は同じはずなのに、一人で食べるときよりも何倍も甘くて濃厚な気がする。勝手に頬が緩んでしまう。
「悠里。料理中に甘やかしてあげられなかったぶん、いっぱい食べさせてあげますね」
「俺も、健人さんにいっぱい食べさせてあげる」
交互に相手に食べさせているうちに、カップの中身が空になってしまった。苦笑する。
「すごく効率の悪い食べ方をしてしまいましたね」
悠里が「俺はいちゃいちゃできて嬉しかったけど……」と寂しそうに俯いた。
「言葉選びが悪かったです。そんな顔しないでください。僕もとても嬉しかったですよ。悠里が食べさせてくれたアイスは、特別美味しかったです」
髪の毛に触れると、顔を上げてくれた。
「好きです、悠里」
「俺も、健人さんのことが好き。今日、来てくれて嬉しかった。ありがとう」
「お役に立ててよかったです」
悠里が好きだ。時間が経つにつれ、この思いは薄れるどころか、膨らみ続けている。もうこれ以上好きになることはないだろう、と毎回思うのに、悠里に会うたび、「好き」が更新されていく。だからこそ、悠里は僕の恋人なのだ、僕は悠里のものなのだ、と声高に叫びたくなる。
『健人さんは俺の恋人だから、とらないで、っていつも思ってる』
看病しに来てくれた時の、悠里の泣き顔を思い出す。僕だって、悠里を誰にもとられたくない。
口が動いた。
「この前のこと、ずっと考えてました」
「この前?」
悠里が僕の言葉を繰り返した。
「悠里が看病しに来てくれた日のことです。悠里が不安なら、僕が言いましょうか?」
「何を?」
「みんなに、僕たちの交際のことを」
かすかに声が震えていた。悠里は、黙って僕の顔を見返してきた。
「ごめんなさい。困らせてしまってますね」
「困ってるわけじゃない。でも――」
とっさに言い返す。
「この前は『でも』禁止、の約束でしたよね?」
「そうだった。……あれ? そしたら、『謝るの禁止』も有効じゃない?」
「あ、忘れてました」
僕が口元を手でおさえると、悠里がぷっと吹き出した。その顔を見て、緊張がほぐれた。
「話を元に戻します。僕も、隠し続けるのがそろそろつらくなってきました。誰かに言ってみませんか? まずは信頼できそうな人から」
「たとえば?」
「とっさには思いつきません。あまり身近すぎると、受け入れてもらえなかった時のリスクがありますからね……」
悠里が「うーん」とうなりながら、天をあおいだ。視線をさまよわせて、思い当たる人物を探しているようだった。その様子を見守りながら僕も考えてみるが、交友関係が狭すぎて、該当者がいない。身近すぎず、かつ、信頼できる人。悠里に「みんなに言いましょうか」と提案したものの、具体的な人物が思い浮かんでいるわけではなかった。
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