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一生分のしあわせ 8

 どきんどきん。僕の心臓が音を立てている。  悠里の舌が口内に侵入してきた。僕を求めるように、悠里が舌を絡ませてくる。  体から力が抜けて、悠里の上にのしかかるような形になってしまった。苦しいだろうに、悠里はそのままキスを続ける。  腰が揺れ、下着越しに自分のモノを悠里の膨らみに擦り付けてしまう。二人の興奮が大きくなり、下着をぐちゃぐちゃに濡らしていくのが分かった。下から脳まで駆け上がってくる電流のような気持ち良さに、頭がおかしくなる。  ――悠里、好き。キスも、触れ合っているところも、全部、すき。悠里、好き、すき、スキ……。  どくん。 「うっ……」  思いより先に、精液があふれてしまった。頭が真っ白になる。悠里が驚いたように瞬きを繰り返した。 「え、なに!? 今のでイっちゃったの!? キスしただけなのに!」 「……い、ってません」  慌てて飛び起きて、悠里に背中を向けた。 「うそつき。見え見えの嘘つかないで」  そうだろうと思う。あれだけ密着していたのだから、悠里の下着も汚してしまったはずだ。  言い逃れはできない。  ――お風呂でずっと裸の悠里を見せられて、我慢し続けていたせいで、暴発してしまった、強気で攻めてた分、かなり恥ずかしい、最悪だ……。  体育座りをして、脚の間に頭を押し込む。衣擦れの音が聞こえ、悠里が起き上がる気配がした。 「俺を見ていっぱい興奮しちゃったんだね。健人さん、かわいい」  悠里は、先ほどまで喘いでいたとは思えないくらい、余裕たっぷりの声色で、僕を責めてくる。 「うっ……」  追い討ちをくらって、床にうずくまった。 「えっ! 大丈夫?」 「悠里、小悪魔……」  独り言のつもりだったが、悠里には聞こえたらしい。悠里が「小悪魔?」と言って、しばらく黙った。 「健人さん、こっち見て」  頭を抱えていると、悠里が明るい声で話しかけてきた。何かを思いついたようだ。 「いやです。ちょっとそっとしておいて」 「だめ。今どうしても見てほしい!」  しぶしぶ後ろを振り返ると、上半身を起こした悠里が両手をいわゆる「猫の手」にして、口を大きく開いた。 「がおー!」 「は? ……なんですか、それ」 「小悪魔のイメージ。がおー!」  先ほどと全く同じポーズをして、鳴いた。悠里の頭の中の小悪魔は、いったいどんな姿をしているのだろうか。力が抜け、ため息が漏れる。 「馬鹿なんですか」  呆れた気持ちで言うと、悠里は急にしおらしくなり、浴衣の乱れを直しはじめた。 「ねえ。『最高の誕生日』の続き、しないの?」  漫画だったら「きゅるん」という擬態語が付いていそうな上目遣いで、甘えた声を出してくるから、股間に響いた。下半身に血が集まるのを感じる。 「悠里は、計算でなくこれをやるから怖いですよ」  悠里がキョトンとした顔でこちらを見つめてくる。  勢いよく悠里に覆いかぶさると、花が咲いたように笑った。思わず目を背ける。 「そんなに嬉しそうな顔、しないでください……」 「だって、健人さんの誕生日を最高なものにしてあげたいじゃん」  一瞬、言葉に詰まった。 「馬鹿。僕は、悠里さえ隣にいたら、いつだって最高です。でも、ありがとうございます。悠里の気持ちは素直に嬉しい」  唇にキスを落とした。悠里が気持ち良さそうに目を閉じる。  ――さっきはやりすぎたから、セーブしないと。  焦らすように触れる程度のキスを繰り返す。

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