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15センチではないけれど 3

  ◆  初めて角巻くんと目が合ったのは、高校の入学式の最中だった。  目の端で動いたものが気になって、そちらを見てみると、隣のクラスの男子が眼鏡を右手の中指で上げるところだった。その横顔がとても美しくて、動けずにいたら、彼がこちらを向いて、ばちんと目が合った。それは時間にすれば一秒にも満たなかったと思うけれど、その瞬間、まるで感電したみたいに体がしびれた。この人が運命の人なんだって思った。  その日からわたしは、彼を追いかけるようになった。彼は容姿が整っていたから、ちょっとした有名人だった。名前、部活、身長、体重、誕生日等という簡単なプロフィールは容易く手に入った。少しでも彼の視界に入るように、選択授業や委員会も、角巻くんと同じクラスの友だちから情報を流してもらって、偶然を装って距離を詰めてきた。  わたしの努力の甲斐あって、無表情だった彼がわたしの名前を呼んでくれるようになり、少しずつ感情を見せてくれるようになり、二人でいてもリラックスしてくれるようになった。今は同じゼミで、コンパ係として飲み会の日程調整をしたり、買い出しや店の予約をしたりしている。  やっとここまできた。もっとわたしの方を向いてもらえるように、ここからスパートをかけるつもりだった。 『僕には恋人が』  布団に入ってからも、角巻くんの声が頭から離れない。  ――どうして、わたしじゃだめなの? ずっとそばにいたのはわたしだよ?  目を閉じる。その拍子に流れた涙が、頬と耳をつたい、枕を濡らした。

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