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第2章 12

「幸村さんはペットに欲情する変態なんだな」  何度も繰り返されたキスのせいで、幸村の体は素直に反応を示していた。 「違う……」 「じゃあ、何でこうなってんの?」  夏野の手は硬くなった幸村の体の一部をスラックス越しに撫で上げる。嬉しそうに、愛おしそうに自分を見つめる視線に耐えきれず、幸村は顔を伏せた。  ――何で……何でだろう。夏野の声が、視線が、吐息が、唇が、その全てが欲しくて欲しくて堪らない。 「幸村さん……嫌なら言って。この先、してもいい?」  片方の手で俯いた幸村の顎を持ち上げ、反対の手でゆっくりとベルトを外していく。夏野は興奮した様子で荒く息をしていたが、その動きは慎重だった。まるで、幸村が嫌だと言うのを待つかのように、時間を掛けてスラックスの前を開いていく。 「いいよな?俺、本当にやるけど……。答えて、幸村さん」  不安そうな瞳に見つめられて、幸村は耐えきれずに濡れた唇を薄く開く。 「……いいよ」  ――あぁ、何で。  伸びた髪を掻き上げ、大きく口を開いた夏野が幸村の屹立を飲み込む。  ――何で、こんなこと。 「あっ……あぁ、夏野っ……」  背中を丸めて腰を引く幸村のことを追いかけ、夏野はさらに深くそれを咥えこむ。引き剥がそうとしているのか、押し込もうとしているのか、幸村は自分でも訳が分からないまま柔らかい髪に触れていた。 「な、夏野っ……こんなっ……」  こんなことをしてはいけない、そう思おうとしても、幸村の思考は与えられる快感によって掻き乱されていく。静かすぎる部屋の中に、夏野の口から漏れる水音と、幸村の甘い吐息が交互に響き渡る。 「夏野、お願いっ……」  ――俺は何を願うのか。  猫のような丸い目が幸村を見上げる。 「イキたい?」  低く尋ねる声は艶を帯びている。 「……イキたい」  ――こんな風に快楽に流されるなんておかしい。でも、紛れもなく俺は夏野を……。  理性は確かにそこに残っているはずだった。それにも関わらず、幸村の口は欲望のままに本音を吐く。 「イカせて、夏野……」

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