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第3章 5
「おい……でけぇ声出すなよ。あんたが外でヤりたいって言ったんだろ?んなこともわかんねぇなら要望出すなよ」
「ご、ごめんなさい……」
「躾のなってねぇSubにしてやれることなんてねぇよ。このエロオヤジが。……だからな、ナオト、自分でやって見せろ。声出すんじゃねぇぞ」
「あぁっ……はい、やります……」
――Sub……これがDomとSubのPlay?一体この男に何をやらせてるんだ?こんなの、おすわりや伏せどころじゃない。
「……うっ……くぅっ……ああ……」
「はぁ?脳みそ入ってる?声出すなっつったのもう忘れたわけ?」
「ごめ、ごめんなさっ……あぁっ、痛いっ……」
「なによ、その目は。おい、こっち見ろよ」
「痛い痛い痛い……ごめんなさい、ごめん、なさい……」
幸村の頭に定食屋で聞いた言葉が浮かぶ。Dom活――パートナーのいないDomがSubを金で買うことをそう呼ぶらしい。
夏野にSubのパートナーがいるかどうか、幸村は知らなかった。この男がそうなのかとも思ったが、だとすれば「名前何だっけ」という言葉は不自然だ。
Playをせずに欲求を溜めてしまうと、DomやSubは体調を崩すと言われている。そのため、例え相手を金で買ったとしても、この行為は夏野達にとって必要なもので、Neutralにはそれを批判する権利などない。幸村は必死でそう思うとしていた。
――でも、さすがにこんなこと……あの夏野が、こんなに乱暴で残酷なことを、自分の欲求のために、金で人を買ってまで……。
「痛いって言いながら嬉しそうだな。痛いの好きなんだろ?じゃあさ……砂の上でチンコ擦ってよ」
「そんな……あううっ」
「俺のCommand聞けないの?なぁ?おい、早くしろよ。このエロオヤジ」
砂を蹴る音が段々と大きくなり、ナオトと呼ばれる男が言葉を失っているのがわかる。合意の上でも過剰なPlayは犯罪行為になると聞いたことがある。止めに入った方がいいのだろうか、幸村が迷いながら足を踏み出したその時、震える声が聞こえてきた。
「レッド」
ぴたりと全ての音がやみ、辺りは夜の公園に相応しい静けさを取り戻す。
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