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第3章 9
夏野は幸村の腕の中で子供のように泣きじゃくった。Domとしての姿を見られた屈辱と、それを受け入れられたことへ安堵の気持ちが溢れてしまったのだろう。
幸村は何も言わずに震える背中を撫で続け、何があっても彼の力になろうと強く決意した。
しばらくして、ようやく落ち着いた夏野に、幸村は淹れたばかりのコーヒーを差し出す。猫舌の夏野のために少しの牛乳を入れて冷ましたものだ。
「幸村さん……ごめん。俺、今まで何も話してこなかったのに、こんなことになってから……」
「いいよ、そんなの。何も気にしなくていいから。でも……もし俺にできることがあれば教えてほしい。金のためって言ってたけど、何か欲しいものがあるってこと?」
夏野はマグカップに口をつけてしばらく黙っていたが、それを一口飲むと真剣な表情で幸村を見た。
「……俺、手術を受けたくて」
「手術?」
「Dynamicsを消す手術。海外では既にやってる医者がいるらしい。だから、そのために……」
幸村はそんな手術の存在すらも知らなかった。自分の持つDynamicsに苦しめられている人は、きっと幸村が想像するよりも遥かに多くいるのだろう。
夏野がそれを望むのであれば、幸村は当然のこととして協力を申し出る。
「……わかった。金なら俺が何とか――」
「幸村さん、ほんとに優しいんだな。そんな真面目な顔して」
夏野は言葉を遮ってそう言うと、弱々しく笑って幸村の頬に手を伸ばした。いつかキスをした時と同じように、優しく、愛おしそうにそれを撫でる。
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