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第4章 7

 2人が新しい生活を始めてから、あっという間に2か月近くが経過していた。月末近くの土曜日、幸村は会社でパソコンに向かっていた。開発部から受領したデータに不備があったため、急いで顧客向けの資料を修正する必要があったのだ。 「ユキ、休日にわざわざありがとねー。杉本には俺からキツく言っとくから。あいつは昔から肝心なとこ抜けてんだよ」 「はは……でも俺の確認不足でもあるんで……。俺の方こそすみません。付き合わせてしまって」 「俺はいいよー。家に居場所ないし」  開発側の担当者とは長い付き合いだという課長と話をしながら、幸村は焦る気持ちで作業を進めていた。案件のスケジュールを考えれば休日出勤するしかなかったのだが、そのせいで夏野を家に置いてきたことを気に掛けていた。  最近の夏野は目に見えてやつれている。少し前に、心配した幸村が追及した結果、Dom性を押さえるための抑制剤を過剰摂取していることが判明し、つい頭に血が上り夏野を責めてしまったのだった。怒る幸村に対し、夏野は面倒臭そうに「わかった、もうやめる」とだけ答えたが、恐らく未だに過剰摂取を続けている。  ――やっぱり無理してたんだ。今日は引き摺ってでも病院に連れていこう。夏野は治療を……誰かとPlayをした方がいい。俺だって嫌だけど、これ以上危険なことをしてほしくない。  昼食を奢るという課長の申し出を断れず、幸村が帰宅したのは午後になってからだった。午前中の診療は間に合わなかったが、午後の部が開始したらすぐに受診しよう、そう思いながら帰路につく。駅前で買った夏野の好物であるシュークリームをぶら下げながら、きちんと仲直りをして、納得してもらった上で2人で病院に行こうと考えていた。

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