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第4章 13
「何で今日ここに来たのかわかんないけど……。やっぱPlay嫌いなんだな。でも、あんたはSubだ。Subなら知っといた方がいい。自分の性感帯と、早くDomを満足させる方法……そうすればもっと楽になる」
そう言いながら、時間を掛けて奥の方へと押し入ってくる。
「多少苦しくても我慢しろ。鼻で息して、歯は立てるな。……そう、それでいいよ」
長いストロークで、口腔内全てに触れるように、時々角度を変えながら何度か抜き差しを繰り返す。やがて夏野はふっと笑うと、上顎の奥の柔らかいところに自身を擦り付けた。
「ここ好きだろ?気持ちいいよな。……俺もだよ。こうしてると感じる」
優しく頭を撫でられ、幸村は今まで感じたことのないような心地よさを感じていた。キスでは届かない場所に触れられ、体の芯が熱くなるような強い快感を覚える。
「でも、これ以上奥は苦しいだけだろ?たとえ相手のDomがそれを求めても、あんたのDynamicsがそれを欲しても、無理に従う必要はない。あんたの体とDynamicsは繋がってるけど別物だ」
――気持ちいい。夏野に触れられるのも、優しい声も、全部……。でも、何でこんなことを言うんだろう。俺を誰だと思ってるんだろう。
「心も同じ……体や心を傷付ける必要はない。そういうPlayが好きなら別だけど、嫌いなんだろ?なら覚えとけ。そうしなくてもSubは満たされる」
幸村の中に生まれた不思議な快感に呼応するように、次第に夏野の呼吸が乱れ始める。
「それから、できればパートナーを持った方がいい。もっと自分を大切にしてくれる人を……。支配されたいと思うことに苦しむ必要なんてない。だって、Subは悪いことなんかじゃないから。……素直に感じろ。今俺にこうされて嬉しいだろ?」
震える声とその言葉は幸村の気持ちを掻き乱す。浮かんでいた疑問も消えかけ、暗示に掛けられたかのように夏野に貫かれる悦びが大きさを増していく。
「……飲めよ。これで最後のCommandだ。全部飲めたら褒めてやる」
褒めてほしい、そのことを今ほど強く願ったことはあっただろうか。見上げた先に、愛おしそうに目を細めて笑う夏野の顔が見えた。
口の中に注がれた液体は、喉の奥を通り、体の中に入り込んでくる。吐き出すなんて考えもしなかった。夏野の欲望の果てを受け入れることで、幸村は全身を駆け巡るような快感を覚えていた。
幸村が顔を上げると、夏野はその頬を撫でて優しく唇を重ねた。まだ精液の味が残る口腔内を確かめるように舌が這い回る。
「よくできました。いい子だな」
――初めてだ。夏野との行為でこんなに満足できたのは。
自分の家のベッドの上にも関わらず、幸村はふわふわとした雲に包まれているような居心地の良さを感じていた。SubになりすましてPlayを行ったことに対する後ろめたさも忘れて夏野に擦り寄る。
「頑張ったから疲れちゃった?可愛い。ありがと、俺のために……。なんか、俺も……今日はもう、眠くて……」
幸村は夏野に抱き寄せられ、嗅ぎ慣れた甘い香りになぜかとても安心してしまい、手錠のことも夏野の体調のことも忘れて眠りについた。
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