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第4章 14
ガチャンと大きな音が聞こえて幸村は目を覚ました。暗闇の中、隣に夏野の気配を感じる。
「夏野……?夏野?!大丈夫?」
「……あ、朝陽……起こしちゃった?」
その声は震え、怯えているようだったが、幸村は自分の名前を呼ばれたことに安堵する。普段の夏野に戻ったようだ。
「朝陽、俺……その、俺……覚えてないんだよ。何をしたのか……でも、俺はきっと……」
「……夏野、いいから待ってて。電気つけてくるから」
幸村はベッドを降りると手探りで部屋の電気をつけた。眩しそうにぎゅっと目を閉じた夏野の手首には、やはり手錠が掛けられたままだった。
「夏野、それ外そう。自分でやったんだよな?鍵は?」
「投げ捨てちゃって……どっかにあると思うんだけど……」
そう言われ、幸村はベッドの周りを見回す。小さく光るものが絨毯の上に落ちているのを見つけて、ようやく夏野の手首は解放された。
「痛そうだな。うち消毒液とかないからコンビニで買ってくるよ」
「……痛くない。こんなのかすり傷だよ。……それよりも、俺は……俺はきっと、朝陽に酷いことを……」
夏野は傷付いた手首を反対の手で隠すようにぎゅっと握った。幸村はその手を優しく解き、震える体を抱き締める。
「大丈夫、夏野は何もしてないよ。暴れてたけど、俺はどこも怪我してないし、結局お前は疲れて寝ちゃったんだよ。ほんとにそれだけだから」
不自然な嘘にも思えたが、夏野に真実を話すつもりはなかった。
「もう落ち着いたみたいだけど、月曜は一緒に病院に行こう。今日のことも過剰摂取のこともちゃんと医者に相談しよう。俺も仕事休むから、お前も明日からバイト休め。な?」
「……でも、朝陽、仕事忙しいって……」
仕事を優先し、病院にも行かず夏野を1人にしてしまったことを悔やみながら、幸村は笑顔で首を振る。
「夏野の方が大事だから。大丈夫、何とかなるよ」
「……ありがと、朝陽」
柔らかい髪を撫でながら、幸村は今度こそ間違った行動を取らないようにと決意を固めた。
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