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第7章 3
夏野を助けてくれたのはその街でバーを経営しているという初老の男性で、静井と名乗った。夏野が自殺をしようとしていたと話すと「ただの酔っ払いだと思ったから救急車も呼ばなかった」と驚いていた。実際、夏野は致死量の睡眠薬を飲む前に全て戻してしまい、そのまま気を失ったようだった。
静井は夏野のことを詮索することもなく、自分を手伝うのであれば、しばらくの間寝床としてバーを使ってもいいと言ってくれた。夏野は考える気力も失い、言われるがままその好意に甘えることにした。
後に分かったことだが、静井には生き別れとなった息子がおり、年は違うが、夏野のことをその息子と重ね合わせて見ているようだった。
夏野は自身がDomであることをNeutralの静井に言い出せずにいた。拒絶されるのが怖かったのだ。しかし、3か月以上Playをしていなかった夏野が体調を崩して倒れ、救急車で運ばれたことにより、あっけなくその事実は知られてしまうこととなる。
夏野はその時初めて、治療行為としてボランティアのSubとのPlayを行うこととなった。相手に過剰なCommnadを下さないよう監視され、拘束された状態で行うPlayは屈辱的で、そういうことをしなければ生きていけない自分の異常性を自覚させるには十分な効果があった。
体調が回復しても自暴自棄な状態で帰ってきた夏野を見て、静井はDynamicsに苦しむDomがいることを知り、彼を追い出すこともせず励ましてくれたのだった。
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