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電話

「佐伯仁って誰?」 「え?クラスメイト…だけど、何?」 なんでその名前が出てくるのかわかなくて幸はしどろもどろ 「ふ〜ん…しょっちゅう電話きてね、鬱陶しいからそろそろ幸に電話させようと思うんだけど、いいよな?」 ポケットから幸のスマホを取り出し見せる更科 それを見て幸の目は見開き、手を伸ばす 「オレの携帯っ」 「おっと」 手でブロックし後退りする更科の顔は心配そうだ 「なんだよっなんで返して」 「変なことしないか?」 「は?」 (通報されるとか考えてる?) 幸は小さく頷くが、更科は自信がない 幸をまだ手放したくはない… 「変な素振り見せたら取り上げる…」 テレテレ〜♪ 更科が幸に手渡そうとしたその時まさにちょうどスマホが鳴った 画面には〝佐伯仁〝の文字 「あ…」 「出ていいよ。ただし、スピーカーで」 「分かった。もしもし?」 言われた通り通話を押し、スピーカーを入れるとしばらくぶりに聞こえる友人の声 〝お、ようやく出たじゃん。マジ心配した〜〝 軽い声に思わず笑みがこぼれる 「なんだよ?」 〝いや、だってお前、内科健診で要検査になって入院してんだろ?……検査入院のはずなのにメールも電話も繋がらないから〝 (え?何その設定) ジロリと更科を見ると人差し指を口に当てムカツク表情をしている (合わせろってことかよ) 「あ、うん…なんか検査検査で疲れちゃってさ」 〝重病?つーか何系?検査するから入院するとかでバイト行けないとは健診の医者から聞いたけど、それ以上は守秘義務とかで教えてくんなくてさ……〝 「え…え〜と、泌尿器かな?たぶん」 〝あ?何性病とかそういうの?〝 「違っ…。んっ!?」 電話しているオレの陰茎に更科はいきなり手を伸ばして刺激をはじめた 〝ん?どうした?〝 「あ…いや、虫。虫がさ急に止まってビックリしただけ」 更科の手をペチペチ叩き払い除けようとするが、更科は執拗に幸に触る その手は乳首にも移り、ふっと熱い息を首元に吹きかけたりとやりたい放題だ 「ん…ぁ、…ぁん」 〝え?ちょっと大丈夫かよ?悩ましい声出てね?〝 「だ…大丈夫。それよりバイトごめん」 急にオレが抜けてオーナーには迷惑がかかってないだろうか 幸は不安に思った 〝あ〜!実は、ピンチヒッター来てくれてさオーナーの甥っ子。俺らと同い年なんだよ、しかも!お前とおんなじ名前〝 佐伯の声は弾んでいる 「おんなじ?」 〝コウって言うんだぜ。お前のは幸せだけどこっちのはすめらぎっての?天皇とかのあの字で皇〝 「へ…へぇ」 〝いや、なんかそれで仲良くなってさ、 退院したら3人で遊ぼうぜ?〝 (退院…そんな日来るのかな) 約束はしたが、解放してもらえる補償って実はどこにもない 今は優しい更科だがちょっと刃向かうと豹変するし、いざその日が来たら手放してくれない可能性もある 〝幸〜〝 〝なぁに?〝 〝いや、皇じゃなくて俺のクラスメイトの方」 〝あ〜しあわせくんか。やっほーっ鈴原皇です。すぅって呼んでもいいよ…っ〝 めっちゃくちゃ脳天気な声が聞こえる 頭緩い系? 「あぁえーと…はじめまして?すぅ?」 〝鈴原のすと皇かすめらぎって書くからすぅって呼ぶ人もいるの…ん。会うの楽しみにしてるねー」 〝て、訳だからまたな幸」 「あ、う…うん」 つーつー…終話しスマホを机に置き、幸は更科の手の甲をつねり上げた 「痛」 「なんつーことしてんだよっ電話中にいじるとかありえない」 「え?いいだろ?向こうもしてたし」 「は?」 「だから、向こうもしてたからいいんだよ。バレるかもってスリルを味わってたんだろ?」 言葉の意味がわからない。 仁ともう1人のがオレとおんなじようなことしてたってこと? けど、仁は女好きだった記憶が… 意味不明 「蓮先生と一緒にすんなよっ」 「職業柄耳が良くてね、変な間だったりちょっと我慢しているような声も出してたし…何よりモーター音間違いないよ」 「…っ」 淡々と語る更科の様子に恥ずかしさを覚え、幸は息を飲む 「お友達とられてショック?」 「違っ。別にそんなんじゃないし。ちょっとびっくりしただけ。普通友達のそういうの意識しねーもん」 幸の耳は赤くそんな幸を見て更科は幸をいじめたくなり始めた 飽きないな… 手放すのがおしい、そう感じる更科であった

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