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更科のトラウマ2

翠…翠…翠っっ なんでもあいつと比べられる 翠は蓮の双子の兄で素直で純真で人に取り入るのもうまく、また成績も良かった 多少運動音痴なところがたまに傷だが、それすらも翠の魅力になった 同じ日に産まれたはずなのにこの扱いはなんだ バコッバコッとゴミ箱を蹴りつづける更科 机の上の書類や本を放り、あたりに散乱させ当たり散らした 思えばいつもそう 素直でかわいいあいつは可愛がられ、そうじゃない俺は邪険に扱われる 両親に最後に名前で呼ばれたのはいつだったか思い出せない 強い劣等感 くそっっ ドカっとソファに腰を降ろし、唇を噛むと血が滲んだ あいつはかなりの高成績で医大に入り今や医局の局長、部長に副部長に次ぐ地位の係長だそうだ 腹の虫がおさまらない 今すぐにでも幸を叩き起こして抱きたいが良心が許さず、行動に移せない バシバシとソファを叩き、手で顔を覆うと記憶が蘇ってきた ・ ・ ・ 「パパママ見てっ100点〜」 「すごいぞ、翠」 「本当自慢の息子よ〜翠」 小学生次代の翠だ。 承認欲求の強い時期だから誰だって褒められたら嬉しい 俺もそんな1人だった 「とーさんかーさん俺もっ98点」 「は?なぜ一問間違うんだ、お前は」 「あなたってなんだか本当残念な子ね」 両親はため息をつきなんだか不満気だ 俺はそれが理解できない 「な…なんで?100じゃないけど98だよ!1問しか間違ってない」 98だって十分立派な数字だ。 もっと褒めてくれてもいいじゃないか 「最後のツメが甘いんだ。油断するからこうなる」 「最終確認は必須よ?ちゃんと見れば分かることだわ」 「見たよ!合ってると思った」 「それが診察で通用するかっっ」 バンっと父親が机を叩く音にびっくりして体を跳ねさせる俺 「15年先には医者になってるんだ。診察でこの病気で合ってると思いますなんて言うつもりか、お前」 「え…そんな先の話されてもっっ」 「今から準備しなきゃ立派な医者にはなれん」 とーさんは激昂する そんな毎日だった ・ ・ 「はぁ…」 大きな溜息をつく 「あ…あの?」 「え?あ、幸起きたのか…早いな」 「何かあった?」 ひしゃげたゴミ箱に散乱した紙、唇から血が滲む更科の顔にくしゃくしゃの髪 何かあったのは明白だった 「あ…いや、、何も」 「嘘。何かあった!唇切れてるしこの部屋の惨状なんなんだよ」 「や…ちょっと」 幸はあたりに広がる紙を拾い上げ机に乗せるとマジマジと更科の顔を見た 「うわっ痛そ〜」 「そう思うか?」 「思う」 「なら、慰めてよ」 手を伸ばし更科は幸を引き寄せる 「え?またするってこと?」 腰が気だるくて気乗りしないがどうするべきか 「別にしたい訳じゃない…ただ慰めてほしい」 「ん〜と…」 対処が分からず幸は更科の頭に手を乗せ 「こんな感じ?」 撫で撫でと更科の頭を撫でた 「かわいい慰め方だな」 「違うの?えーとえーとじゃあ一緒に風呂入る?背中洗ってやるよ。ただし、背中だけ」 「いいよ。それで」 更科はやわらかな笑みを浮かべ頷いた

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