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お留守番2

ゴソゴソ…ゴソ (え?誰かいる?) 幸は時計を見る。まだ19時だ…言われた時間より早すぎるのに人の気配がして身が縮まる (まさか、強盗?) スタスタスタスタ…ピタ 部屋の前で足音が止まり、思わず生唾を飲む 手に枕とリモコンを持ち投げる準備はできてる 来るなら来いっ ガチャリ、、 扉が開き反射的に枕を放る 「おっと…ってえ?子ども?」 知らない男は枕によってずれたメガネをくいっと押し上げマジマジと幸を見た 「え…と、とりあえずリモコンおろそっか」 「お前どこの誰だよっ他人んちにいきなり来て!強盗?」 リモコンを握る手に力をこめる 「ん〜状況が読めないんだけど、、僕は指宿巧と言います。一応指宿病院ってとこで精神科医なんてやらしてもらってます」 「イブスキタクミ?医者?」 「そ、指宿巧先生です」 「そのイブスキが何しにきた!」 「ただ友人ちに来たんだけどね、、蓮知らない?」 蓮という名前にピクリと目の前の子は反応をしめす この子は高校生くらいだろうか? よく見ると足が拘束されている しかも、学生時代に自分があげたものだ… 親の病院から出た廃棄品 棄てるならくれとは言われたがまさかこんなとこで目にするとは思わなくて目を何度もパチパチしてしまう 「名前は?」 「え?コウ」 「コウくんか…これ、拘束って蓮がしたのか?」 手を伸ばし指宿は拘束帯を引っ張った コウくんは頷く 「マジか…蓮は精神科医でもないし指定医にしか権限はないはずなんだけどね」 うろうろと部屋を周り小さな部品を探し当てそれを持つと拘束帯の留める部分に押し当て拘束を外した 「外せるんだ、イブスキ!」 幸はびっくりしてマジマジと指宿の手におさまる部品を見つめた 「それなに?」 「マグネットだけど」 「マグネット!そういう仕組みか」 幸は指宿から部品を奪いカチャンカチャンとマグネットを付けたり外したりして仕組みを確かめた 「あの…コウくん?ちょっといいかな」 「何?」 幸は振り返り指宿を見据えた。その顔は医者の顔つきだった そのわりに甘い香りがする指宿に不信感がわく 「僕は医者としてちょっと診察させてもらいたいと思うんだけど…」 「は?何の?」 怪訝な顔をして幸は指宿を見つめる 指宿は優しく悟すように幸の肩に手をあて 「君、蓮に誘拐されたんだろ?違う?」 「…っ」 「図星だね。体、見せれる?」 指宿は幸に脱ぐようにすすめる。 あくまでも優しい雰囲気だ。待つスタンスなのだろう 「分かった…」 幸はパジャマに手をかけパジャマを脱ぎ去り、床に落とした 「下も脱ぐ?」 「いや、いいよ」 見事なまでのキスマークが体に咲いていた 特に首筋、あれはつい最近だろう 「う…わ。強姦…されたんだね、辛かったろう」 「…っ」 あらためて強姦と聞くと胸が詰まる が、いまは自ら望んでする時もある 誘拐された最初の数日とは違う絆のようなものがある なによりも一緒にいると妙な安心感でほっとする 「今なら逃してあげれるよ?」 「え?」 バクバクと心臓が鳴る 「いやだ」 「え?もしかして蓮に愛情感じてる?」 「だ…だって、蓮先生のそばにいなきゃっ。好きか嫌いかで言えば好きなんだと思う」 指宿は頭を抱える 「コウくん…それは、それはっストックホルム症候群だ。PTSDも発症してるっ」 「なにそれ?」 指宿は説明をはじめ、幸の隣に腰をかけた 「ストックホルムは誘拐犯に被害者が恋をしてしまうような感覚に陥る症状で自分を守るために生まれた感情なんだよ。だから、まやかしだ」 「嘘だっ」 「今なら治療すれば引き返せれる!コウくん逃げよう」 (逃げる?逃げんの…??) 幸ははぁはぁと息を荒くさせた。 「じゃ…じゃああいつ…蓮は!?蓮はどうなるの?」 「入院させる。あいつにも然るべき治療が必要だ」 「入院って…」 幸は頭が真っ白だった。 突然のことすぎて頭が整理できずただ一点を見つめていた

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