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指宿巧

幸を起こさないよう静かに寝室を出て更科はリビングへ向かった。 手にはスマホを持ち、少ないアドレスのトップに出てくる指宿巧のページを開き通話ボタンを押した。 何回目かのコールの後、電話は繋がった 「あ〜巧?」 「蓮?どうしたの?」 「来たろ?俺の家」 「え………。あ、いやもしものために合鍵預かってるしそれでね。いなかったから帰ったんだけど……」 妙な間があく やはり何かあったとしか思えない 「どうなんだよ?来て見たんじゃないのか」 (見た。というのはあの子のことだろう…なんで気がついた?それとも話したのか?) 指宿は思案を巡らせた。 どう答えるのが正解か… 返答次第ではコウくんが危ない 「あ〜…。えーと…それよりよくわかったね?僕が来たの」 「匂い」 「え?」 「なんかかすかに甘い香りが残ってたんだよ!医療者の常識だろ?強い香りは判断鈍るし不快感与えかねないからご法度なのに巧の香水香るんだよっ」 「それでバレた訳か…」 「バレたってことはやはり何か隠してるなっ」 電話の向こうの蓮は怒りが抑えれていない まずい。そう感じた指宿は素直に答えた 「見たよ。高校生の男の子」 「…っっ!」 「ん〜と、彼…コウくんだっけ?蓮のとこに入院中らしいね?なんだかな泌尿器系とか言ってたかな?入院施設無いからあそこにいるとかなんとか…拘束もどきにはびっくりしたけど…あれ、使ってたんだね?」 咄嗟に出てくる言葉に我ながら驚く 導尿の話を聞いていなかったらうまく切り抜けれなかったかもしれない 「で?」 短く更科は問う 「で?って…」 「拘束使ってるの見てなんも思わなかった訳か?」 「いや…うん。よくないよね。許されない。放置だしなにより蓮に拘束の資格ない。捕まるよ?蓮」 「よくそのまま帰ったな」 「いや…思うところあってね」 「「……」」 2人して沈黙。 沈黙を先に指宿が破った 「夏のはじめかな?ちょっとおもしろいのがいたとかなんとか言ってたじゃない?ひょっとしてその子だったりする?」 「え…ぁ、ぁあ。その通りだ。そんな話したか?」 「したよ。内科健診押し付けられたーって怒りの呼び出しから次の日なんか俺が夜勤の日も電話してさらに呼び出してきたじゃない?忘れた?」 指宿からの指摘にだんだんと少し前の記憶が蘇ってきた たしかに6月の半ばにそんなことがあったかもしれない…

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