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回顧録
6月半ばのある夜のこと、、
いやな予感はしていたがいつものように突然親父から電話が鳴り、明日高校であるとかいう内科健診を有無を言わさず押し付けられた。
普通市だったか教育委員会から委託された医者がやるはずのものなのにマジにありえないと思う。
(はぁ…っ)
大きな溜息がでる。いつもなら羽根をのばせる休診日なのに、その休診日にわざわざ近所の高校に出向くとか意味がわからない
怒りの矛先はそのままスマホアドレスの指宿巧へと向けられ、通話ボタンを押し指宿へ電話をかけた
巧は医大時代の友人で長い付き合いだ
ちょいちょいこうして俺の愚痴に付き合わせさせている
悪いとは思うが巧は精神科医だ。こんな愚痴など聞き慣れてるだろう…と思ってついつい呼び出してしまう日常だ
「巧?今から出れるか?ちょっと呑み付き合えよ。むしゃくしゃするから憂さ晴らししたい」
「え〜困るな。明日は夜勤なんだ。遅くならないでよ?」
「分かった」
・
・
電話を切ると2人はいつものバーへと向かった先についていた指宿が入り口で待っている
「あれ…先、中にいてよかったのに」
「いま、来たとこだから」
「それならいいが、、」
2人して中に入るとマスターは一瞥し会釈した
「いらっしゃいませ。指宿さまに更科さま、マティーニ、シェイカーでおつくりでよろしいですか?」
「任せるよ」
「かしこまりました」
マスターは慣れた手つきで小さなコップに液体を注ぎ、シェイカーの蓋をしめると軽くシェイカーを上下に揺すった
普通はシェイカーだと濁りが出てしまうとか薄くなるからとかでステアとかいう技法を使うがあえてシェイカーで作ってもらう
マスターはカランと音を立て蓋をあけるとグラスにアルコールを注ぎ、上にオリーブを乗せてあ
「マティーニでございます」
「ん」
グラスを手に持ち一口呑み、グラスを戻すとその独特な苦みと辛さ、度数の高さに眉を寄せ一息つくとさらに更科は指宿に愚痴を言いはじめた
思えば長い付き合いで15歳からだから20年以上つるんでる計算になる
「内科健診とかマジだるいよ」
「まあまあそう言わない。もしかして楽しいかもしれないし?」
「まあ、それもそうだな。」
不思議な力だ。巧と、話していると自然とそういう気分になる
精神科医の醸し出す雰囲気や力なのだろうか?
「気乗りしないだろうけど…気ままにね」
「分かった」
2人はチビチビと酒を呑み夜を過ごした
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