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ストーキング
翌日の診察時もその後もあまり記憶にない。
ただ機械的に診察の数をこなした
ただただ幸のことで頭がいっぱいだった。
「おつかれさまです〜先生」
看護師の労う声が聞こえてくるが遠くからのように聞こえるほど上の空の更科は診察が終わるやいなや幸の高校へと向かっていた。
衝動的な行動だ。
普通に考えればありえない行動だが、あの時は普通じゃなかった。
高校につくも、当然門は閉まっているし来てもどうしようもないが幸がここにいると思うといてもたってもいられず、右へ左へ歩いた。
門の前でウロウロする男はどこからどう見ても変質者で職員室から教員が複数名門へと走り寄ってきた。
(まずい…っ)
反射的に更科は後退る
踵を返そうとしたところでひとりの先生が口を開いた
「あら?ひょっとして更科先生では?昨日何かお忘れに?」
「え?えと…まあそんなとこです」
本当は忘れ物などないがこの際どうでもいい
一目もう一度幸の姿を見たい
更科は思い、嘘をついた。
ガララ…と門が開けられ教員に手招かれるまま、校内へと入った
「どうぞ」
「すみません」
無計画なままここまで来て頭が真っ白だ
この後どうする?
「保健室、ご案内しますね」
「あ、いや。昨日の今日なんで覚えていますよ。お構いなく」
「え?そうですか?じゃあご用が済んだら職員室へお願いします。門の開け閉めの都合があるので」
「分かりました」
心臓はバクバクだ。不審者にならないよう気をつけながら校内を散策すると昨日のあの声が聞こえた。幸だ
思わず物陰に隠れ様子をうかがう。
チラッと見ると幸ともう1人クラスメイトだろうか?まったく記憶にない
「マジにめちゃくちゃ待遇いいから夏休みバイト一緒に行こうぜ?」
「はぁ?海とか無理。焼けんじゃん」
「女子かよっ」
ケラケラと笑い声。高校生って感じで楽しそうな雰囲気だ
「ん〜。別にいいけどなんか面倒くさいな」
「行けば都だって。3食付くし休憩中なんかは普通に遊んでていいって」
「は?住み込みな訳?考えとくわ」
「つれね〜とにかく約束!もうオーナーには話してあるからっ」
「はいはい…」
なるほど……住み込みでバイトか。
使えるかもしれない
その期間なら幸が消えても親には怪しまれない
いい情報だ。
更科はニヤっとした笑いが止められない。
使える情報を手にして満足した更科は職員室へ立ち寄り高校を後にした
その後も幸を尾行したりしてストーキングし、着々と誘拐するその日を迎えようとしていた。
決戦は今日の昼。終礼後だ……
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