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第15話

 馴染むのを待ってから、俺はゆっくりと腰を動かす。俺を包む込む壁を広げるように左右に揺すり、擦り付けるように抜き差しをする。  その度に天音が喘ぎ声をあげる。  ──── 天音も……気持ちいいのか……?  白い肌が首筋まで淡いピンク色に染まっている。背中に触れるとうっすら汗をかいているようだ。  ──── こっちはどう……?  天音の脇から手を滑らせ、に触れる。俺と同じように昂っているのか。  それは腹につくくらいにそそり立ち、先から水滴を溢していた。  その様子に何故だか安堵を覚えた。  俺は天音の内を突きながら、彼の屹立を扱いた。 「──っめ……さわっ……っだめぇ」    天音がそれに気づいて、片手を後ろに回して俺を追い払おうとする。しかし、見えていないのか力が入らないのか、俺の手を掠る程度だった。  それに構わず俺は扱く手を激しくする。 「ぁぁあっっ」  一際高く喘いだと思うと、天音の屹立が白濁を吐き出した。そのまま握り締めながら、俺は内を激しく突き始めた。  ぐちゅぐちゅという淫靡な水音と、肉体がぶつかり合う音が、静かな部屋に響き渡る。  確かにそこに存在する。  天音の内は熱く、俺を締めつけている。  天音も快感で喘ぎをあげている。普通の人間の反応だろう。  それなのに、何故か。  生身の人間を抱いているような気がしない。俺は心の奥底でそんな風に感じているような気がした。    これは天音が見せた幻なのではないか。  天音は……神か天使か、もしかしたら、悪魔かもしれない。  そんな馬鹿なことを考えながら、俺は天音の内に熱を吐き出した。 **  から、二年。  俺たちの関係は少し変わった。  彼の弟は、愛した男が自分の前から姿を消し、体調を崩した。制作途中の仕事も出来なくなり、天音にも他の家族にも会おうとしない、引き籠りの状態が続いた。  最初こそは天音も俺に話していたが、やがて、弟のことは一切話さなくなった。  ただ、時折幽鬼のような様子で現れ、俺を求めてくるようになった。やり場のない気持ちを吐き出したいのだろう。  俺はそれに応じ、優しく激しく、天音の望むままに彼を抱く。  しかし、あの時と同じで、必要以上に触らせもしないし、最中は顔も余り見せない。  彼に俺への愛はない。これは、セフレとでも呼ぶ関係だろうか。 **  クリスマスも近い、寒い夜。 「何かあったら、連絡して」  ナースステーションでいつものように声をかけ、通用口へと向かう。 「四季先生、恋人でも出来たのかしら」 「ね……最近ないよね……」  ナースたちが揶揄するのが、聞こえた。  ── 恋人……ねぇ……。そんな、いいもんじゃないけど。

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