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02※

 休み時間が終わり、次の授業が始まる。  体育館、コート横。  今日の体育はバスケだ。こんなクソ寒い中身体を動かす気になんてなれない。他の連中は喜んでいるようだが……。  一番ケ瀬の姿はない、用事が立て込んでるのだろうか。俺も体調不良など理由つけてサボればよかったかな、なんてそんなことを考えているといきなり臀部に硬いものがぶつかる。そして足元にコロコロと転がるのはバスケットボールだ。 「わりいわりい、手が滑った」 「っ、……気を付けろよ」  にやにや笑いながらボールを取りに来るクラスメートの一軍野郎を睨めば、やつはそのままどっかいく。なんなんだよ、腹立つな。俺が二軍のときからいけ好かないやつだとは思ったが、四軍落ちになってこういった些細な嫌がらせは一気に増えた気がする。教師の手前、いちいち揉めて目を付けられるのも面倒だった。俺はコートから離れるように体育館の隅へと移動した。  さっさと終わんねえかなとぼんやり遊んでる連中を眺めてると、ふと側に人の気配を感じた。 「と……十鳥君、あの……ごめん。これ倉庫に持って行くんだけど少し手伝ってほしくて……」  顔をあげれば青白い辛気臭い顔。おどおどとした口調で話しかけてくるのは三軍のクラスメート、二通(ふたごおり)だ。  二通の後ろにはボールが大量に載せられたカートや他用具などが置かれてる。そしてそんな二通を遠くで一軍連中がにやにや笑ってるのが見えた。……どうやら押し付けられたのだろう。どう見ても一人でどうにかこうにかできる量ではない。 「……別にいいけど」 「う……うん、ぁ……ありがと、十鳥君……」  このクラスには三軍自体少ない。今までは二通が毎回パシられていたが、新しく俺が最下位に落ちたことで二通も少しは楽できるってことか。  複雑ではあるが、これくらい殴る蹴るに比べたらまだ可愛い方だ。  ニヤニヤ見てる隣コートの一軍連中を無視して、俺は二通と一緒に荷物を倉庫へと運ぶことにした。  一人では何往復も必要になるが、二人だと早く終わりそうだ。  体育館倉庫を開き、薄暗いそこに抱えていた荷物をおこうとしたときだった。  背後で扉閉まる音が聞こえた。 「ん? ……あ、閉まった?」  扉の横に二通が俯いていた。でかい背を丸めて縮こまった二通は何も言わない。なんとなく嫌なものを感じながらも、俺は倉庫の扉に手を伸ばす。……案の定扉はびくともしない。どうやら外から閉められてしまったようだ。  そして、二通のこの様子からしてこいつも利用された立場なのだろう。あのときこちらを見ていた一軍連中の顔が浮かぶ。 「……なるほどな」 「……っ、ご、ごめん……十鳥君……」 「ごめんって、別にお前は悪くないだろ。つか……明かり……真っ暗でなんも見えないな……」  確か扉横にあったはずだが……。  そう、壁に手を付いて探っていたときだった。背後から伸びてきた手に手首を掴まれる。項に吹き掛かる吐息に内心ぎょっとした。 「……二通?」 「っ、ごめん、ごめんなさい……っ、本当、ごめん……っ」 「っ、おい、どういう……」  意味だ、と聞き返そうとしたときだった。背後から抱き締めるように回される腕にぎょっとする。薄手の体操着越し、腹部から胸を撫でるように触れられ全身が凍り付いた。そして、ケツに感じる硬いブツ。……まさか、こいつ。 「っ、ふたごおり、待て、お前……ッなに、やってんだよ……っ」 「十鳥君……っ、ごめ、本当……俺……っ」 「ん、ぅ……ッ!」  やめろ、と身体に絡みつく腕を剥がそうとするがこいつ、見かけに依らず力が強い。  項を舐められ、胸を揉まれれば堪らず声が漏れそうになる。布越しに引っ掻かれ、そのまま浮かび上がる乳首を抓られる。 「と、十鳥君……っ、少し、だけ……少しだけだから……っ」 「ん、ぶ……ッ、ぅ……ッ!」 「は……ッ、ん……ッと、とり……く……ッ」  躊躇いがちに唇を触れられ、そのまま震える唇でキスをされる。何を、されてるのか俺は。  長い前髪の下、やつの目がこちらを見て離れない。脅されたのか、これもカースト上位様の娯楽のつもりなのか。震える手で身体を触られ、技巧も糞もない子供のようなキスで唇を塞がれる。 「っん、ぅ……ふ……ッ!」 「っ、ほ、ぉり……く……ッ」  唾液を吸われ、舌を絡め取られ、薄皮から咥内の粘膜までも丹念に舐められる。ぐちゅぐちゅと咥内で混ざり合う唾液に頭の中がじんと熱くなる。  一番ケ瀬とも他のやつらとも違う、感情をぶつけられるような性急なそれに溺れそうになる。 「ん゛ぅ、ぉ……ッ、ふ……ッ」  ぢゅぽん、と音を立て舌を抜かれる。上気した顔、濡れた目でこちらを見据える二通の唇は泣きそうにわなわなと震えた。そして。 「っは、……ふ、ッ、と、とり君……ッ、ごめ、俺……ッ」  今にも泣きそうな情けない声。知ったやつにキスをされるのはきついが、そうだ、こいつだって本意ではないはずだ。  ごめん、十鳥君、と何度も繰り返す二通を見て責め立てる気は起きなかった。……こいつも被害者なのだろう。  幸い俺はこの一週間で大分鍛えられていた。 「……は、っ、んだよ、罰ゲームにしちゃ……趣味最悪だぞ……っ」 「……っ、本当、ごめん……俺……」 「っ、いい、もう謝るなって。これくらいなら別に慣れて……」  るから。そう言いかけたときだった。  べろん、と大きく捲られる体操着の裾。剥き出しになった哀れなほど筋肉と無縁な貧相な身体を晒される。そして、首筋に掛かるのはふーっ、ふーっという荒い二通の吐息。 「お前、なんで……」 「……っ、ごめん……十鳥君……俺……っ」 「……待て、待てって、落ち着け二通ッ、こんな……ッ」 「っ、……十鳥君……」 「っ、ひ、ィ……ッ!」  薄暗い倉庫の中、二通に抱き竦められるように胸を揉みしだかれる。こんな平なものを触って何が楽しいのか。やめろ、と二通の腕を掴むがやつはお構いなしに尖った突起を柔らかく触れるのだ。 「っ、ふ、たごおり……っ、やめろ、これ……以上は……ッぁ、ふ」  項を噛まれ、耳の裏に舌を這わされる。にゅるりとした長く、熱い二通の舌の感触に驚く暇もなかった。あまりにも優しく、そして執拗に乳首を刺激されれば恥ずかしさと妙な感覚でどうにかなってしまいそうだった。  こいつも脅されてるのだ、震える手でやわやわと触れられることにより、射精には繋がらないほどのもどかしい微弱な快感が余計俺を苛める。 「っ、ん、ぅ……ッ! ふ、た、ぉ……ッ、い……ッ」 「っ、と、十鳥君……ごめんね、すぐ、……終わらせるから……っ」  終わらせるって、なんなんだ。  じんじんと痺れる頭の中、掴んでいた二通の片方の腕が俺の下腹部に伸びた。 「っ、ま、て……っ、二通……ッ!」 「っ、十鳥君……っ、は、ぁ……十鳥君、ごめん……っ、俺が、君のことすきなせいで、こんな」 「っ、な、に……っ、言って、さわ、んな……っ二通……やめろ……っ!」 「ひ、ィ」ジャージのウエストのゴムを掴まれ、そのまま思いっきりずり下げられそうになる。咄嗟にウエストを掴んで履き直そうとするが、二通は無視してジャージの中に手を突っ込んでくるのだ。 「っ、や、めろ……っ、おい……ッ」  二通の腕を掴み、止めようとするが全く歯が立たない。非力そうな顔をしてどういうことか、それとも俺が非力なだけなのか。  太腿を撫で上げる指先がそのまま這い上がってくる。下着越し、腿の付け根からその奥にある部分を柔らかく触れられればそれだけで全身が凍り付いた。 「っ、ふ、たごおり……」 「……っ、ここが、十鳥君のあそこなんだね……」 「っ……やめろ、ッさわ、……ッる、な……」  あとあそことかいうな、余計キモさが増すんだよ。という俺の声は続かなかった。下着の裾からねじ込まれる指に、下から肛門を揉まれたのだ。嘘だろ、と二通の腕に爪を立てれば二通は余計興奮した様子であろうことか人の項に噛み付いてきた。 「っ、ぁ、く……ッ!」  ほんの一瞬、痛みに気を取られてる間にずぶりと挿入される指先に全身が粟立つ。撫でられたり揉まれたりすることはあった。けど、こうして直接触れられることはなかっただけにショックを受けるが、落ち込む暇などない。 「っ、ふ、たご……ッぉ゛……ッ」 「っ、ん゛……は……ッ、十鳥君のナカ……ッすご、狭いね……っ、やっぱり、俺の思った通りだ……」 「っひ、ぅ゛ッ」  痛い、馬鹿、やめろこのアホ。言ってやりたいことは山程あるのに、目の据わった背後の男がただ恐ろしくて血の気が引いた。  どれだけ固くなった身体も力任せに開かされる。ガシガシと中をかき回され、こじ開けられ、あまりの痛みに全身の筋肉が突っ張りそうになった。 「い゛ッ、抜け……ッ、へた、くそ……ッ!」 「え、ご、ごめん痛かった? ごめんね、本当ごめん、俺、つい調子に乗っちゃって……ッ」  分かったらいい、なんて問題ではない。それでも俺の言葉を聞き入れて指を引き抜いてくれる二通にほっとするのもつかの間。腰を掴まれる。 「へ」と思った次の瞬間、今度こそジャージを脱がされてしまうのだ。 「……っ、な゛ッ」 「……っ、そ、そうだよね……男同士なんだから勝手に濡れないんだったよね……ご、ごめん、俺こういうの初めてで気が利かなくて……」 「な、に、言って」 「……っ、だから……今度はちゃんとたくさん濡らしてあげるね」 「十鳥君」と人の尻に顔を埋め、深く息を吸う背後の男に俺はただ目の前が眩んだ。  正直な話、俺は二通に同情していた。  気が弱くて頭も弱い、図体だけがでかいお陰でやたら周りから浮いては面白がられていいように扱われてる二通のことを。  だから、今回のこともこいつは嫌々他の連中に脅されてやってるのだと思っていた。だけど、そうではない。そう確信したときには何もかもが遅かった。 「ッ、ん゛、ぅ……ふ……ッ、十鳥君の、匂い……っ、すご、俺……十鳥君の生のお尻の穴見れるなんて……ッ」 「や゛っ、やめろ、そこで喋っ、ぅ、あっや、舐めるな……っ、馬鹿っ! なに、ぃ、ひッ」 「っ、十鳥君十鳥君十鳥君十鳥君……っ、かわいい、な、中も……処女ピンクなんだね……っ、かわいい、おいひいよ十鳥君……っ」 「あ゛や……ッ、めろ……ッやめろ、やめろってば……ッ!!」  足を閉じようとしても両腿をがっしりと掴まれ、開いたまま固定された状態でべろべろ犬のようにケツの穴をクラスメートに舐め回されるというのはなにかの拷問なのだろうか。  アナルの皺まで舐め回され、執拗に鼻で呼吸され、おまけに捲られたと思えばそのまま唾液を擦り付けるようにして内壁までもをやつの舌で犯される。躊躇なく舌を動かし隅から隅までを唾液を塗り込んで奥へ奥へと入り込んでくるやつにただただ逃げることすらもできない。やはり拷問である。 「っ、ふー……ッ、ぅ゛、あ゛ふ……ッ!」  ぢゅぷぢゅぷと腹の中で唾液をかき混ぜられる音が響く。受け止めきれず唾液が溢れようが二通は全く気にしない。まるで何かに取り憑かれたようにして中を舐め回し、そしてどさくさに紛れて人の性器に触れるのだ。 「っ、ん゛ひ、ぅ……ッ」 「は……っ、十鳥君も気持ちよくなってくれたんだね」 「ちが、おれ」 「……っ、嬉しい、俺の舌で気持ちよくなってくれたんだ、良かった、十鳥君……ッ」 「っ、やめ……――ッ」  やめろ、という声は言葉にならなかった。二通はあろうことか人の性器を口に含んだのだ。  感じたことのない、柔らかい肉に包まれるような感覚に頭がどうかなりそうだった。勃ちかけだった亀頭を唇で挟まれ、頬を遣って全体を包み込まれる。先程まで肛門を舐め回していた二通の舌はまるで蛇のように性器に絡み付いては俺の性器を愛撫するのだ。 「ふ、ぅ゛……ッ」 「っは、ぁ……ッ、うそ、うそだろ、うそ、す、うな……ッ、やめろ、頼むから……っ、これ、以上は……ッも、やめろってば……ッ頼む、ふたごおり……ッ!!」  深い、どこまで咥えるのかすらもわからない。このまま二通に噛み付かれないか怖くなって、俺は堪らず目の前の二通の頭を掴んだ。やつの目は異常だった。人が懇願するのを見てやめると思いきや、やつは興奮したように更に鼻息を荒くして俺の腰を掴んで喉の奥まで性器を飲み込もうとするのだ。 「あ゛ッ……ッ、ひ、ぐ……ッ、ぅ……ッ!!」 「ん゛っ、ぉ、ひ……ッ」 「や゛め、ぇ゛ッ、ひ……ッ、ぃ……ぐ……ッ!」  二通の喉全体で性器全体を締め付けられるだけで全身の毛穴が開くようだった。怖かった。恥ずかしかった。それ以上に熱にどうにかなりそうになって、目の前が白く染まる。必死に二通の頭を掴んで引き離そうとするが、二通の指は皮膚に食い込む勢いで俺を捕らえて離さない。そして。 「ふ……ッ、――~~ッ!!」  呆気なく我慢のダムは決壊した。俺は二通の喉の奥へ思いっきり射精してしまう。ごぷりと音を立て溢れ出す精子に驚いたように目を見開いた二通だったがそれも一瞬、俺が二通の口から性器を引き抜いたとき、やつは躊躇いなく口の中の排泄物を飲み込んだのだ。 「お、い、なに、飲んで」 「は……っ、十鳥君の精子……っ」  熱と性欲に溶けきった目に理性の欠片など見当たらない。己の精液と二通の唾液で濡れた人の性器に目を向けた二通に血の気が引いた。 「や、やめろ……っだめだ、今は……っ」  射精したばかりでまだ敏感な状態だ。またあんなことされたら。  やめてくれ、と泣きそうになりながら懇願するが二通の耳には入っていない。やつは俺が言い終わるよりも先に性器をぱくりと咥えた。  瞬間、自分のものとは思えないほどの声が喉の奥から溢れ出す。  ヂュルルルッ!! と、品のない音を立て、尿道口に残った精液の残りカスまでもを吸い出される。皮を剥かれて隅の隅まで舐め回され、あっという間に芯を持ち頭を擡げるそこを飴玉のようにしゃぶる二通はうっとりと目を細め、俺の腰を撫でるのだ。それだけで下腹部がびくりと震えた。垂れる先走りの一滴すらも残さないと二通は蛇のように長い舌を伸ばし、上目で俺を見上げた。 「はあ……ッ、ととり君の味……っ俺にフェラされてイッたととり君の精子……っ、最ッ高……っ、もっと、まだイケるよね、ととり君オナニー毎晩やってるもんね? これくらいじゃむしろ全然足りないかも……っ、俺、が、頑張るよ……頑張るから見ててねととり君……っ」 「っ、う、ゃ……っ!」  すり、と腰を撫でていた指は、無防備になっていた臀部を鷲掴む。感触を楽しむ余裕もないとでもいうかのように先程唾液で慣らされ柔らかくなったそこに触れられたと思った次の瞬間、二通の骨張った指が躊躇なくねじ込まれた。 「っ、ひ、ッ」 「っ、たくさん舐めたから、今度は痛くないよね……?」 「あ、や、うそ、だ、ッ……やめろ……ッ」 「……やめないよ、十鳥君」 「っ、ひ、ぅ、あ゛っ、や、ぬけ、ぬ゛ッ、ぅ」  第一関節から第二関節へと沈む指先はあまりにも身勝手で、甘く優しい言葉とは裏腹に二通の性欲に忠実に動き、奥へ奥へと押し進んでくるのだ。  痛みは薄らいだが、それでも異物が挿入される感覚はあまりにも違和感が大きく、内側から押し上げてくるような圧迫感に堪らず声が漏れてしまう。 「っ、く、苦しい……? ごめんね、十鳥君、す、すぐに……気持ちよくしてあげるから」 「っ、ぁ、いやだ、やめろっ」 「……っ、十鳥君……ッちゅー……っ、ちゅうもしよ、ね……? そしたら、そうしたらもっと気持ちよくなれるかもだから……っ」 「んっ、ぅ……やへ……ッ、ん゛ぅ~~……ッ!!」  何故、何故俺はこいつにケツをいじられながら先程まで俺のケツの穴とチンポしゃぶったその口でキスをされてるのか。  あまりにも嫌悪感が大きいあまり息をすることすらもできなかった。必死に口を閉じれば、切なそうに眉を寄せた二通は俺の口元を舐めるのだ。  嫌だ、絶対に口を開くものか。顔を逸らそうとすれば、傷付くどころか更に頬を紅潮させた二通はそのまま俺の頬や耳を舐め出した。そしてどさくさに紛れて二本目の指が追加される。 「っ、ひ、ィ……ッ! や、め゛……ッんッ、ぅ……ッ」 「ん、ぅ……っ、十鳥君……ッ、十鳥君かわいい、かわいい……ッ好きだよ、ずっと君のこと……っ優しくて不器用で可愛くて可哀想な俺の女神……っ、セックスしたい……いいかな、ね、十鳥君も勃ってるからこれっていいよね、そ、そうだよね……? 十鳥君のナカもとろとろだしこれって合意ってことだよね?」  快楽とはあまりにも掛け離れた行為だった。  力任せ、欲任せ、ぐちゃぐちゃに中をかき回されて不快なのに、長く細い二通の指は時折俺の弱いところを責め立てるのだ。  好きでもない野郎と、ましてやセックスなど笑えない冗談だ。 「っい゛ッ、い、いやだッ、誰が……ッお前なんかと……ッ、ぉ゛ッ!!」  入口付近、性器の裏側の辺りを大きく引っかかれた瞬間全身の筋肉が震え上がった。先程までガシガシと中を引っかかれて違和感しかなかったのに、そこを触れた瞬間頭の奥からじんわりと熱が溢れ出すのだ。  そして、 「っ、ぁ、ま、ま゛でッ、ふた、ごぉ゛ッ、ひッ!」  瞬間、空いた手で胸の乳首を抓られる。瞬間、刺すような痛みとともに頭の中が真っ白になった。  目を見開けば、先程とは打って変わって恐ろしく冷たい目でこちらを見る二通がいた。 「……ッ、なんで、なんでそんなこというの? 嘘つき、十鳥君の中こんなに……ほら、ねえ、わかるこれ、君の先走りと精液で中とろっとろだよ、こんなのもう女性器だよね、そうでしょ十鳥君」 「ぢがッ、ごんな゛の、ちがうっ、おれ」 「ね、ほら、セックスしよ、俺、チンポ挿れたい、君の中に入りたい、ね、いいよね、君だってこんなに中ひくひくさせて俺のチンポ欲しいんだろそう言えよなあこのビッチが! 童貞のブサイク三軍とはセックスしたくねえのかよ糞……ッ!」 「ッひ、ィ!!」  駄目だ、そこはだめなのに。  下手くそなくせに、俺が弱いところを見つけてそこばかりを猿の一つ覚えのように乱暴に指で捏ね繰り回されるだけでどうにかなりそうだった。  乳首を抓られ、中を責立てられながら罵声を浴びせられる。屈辱なのに一言も言い返せられない。抵抗すらままならない。ガクガクと震える下腹部、足元には先走りと精液が混ざったものがぼたぼたと垂れ落ちる。 「一番ケ瀬のやつばかり色目遣いやがって、俺が……ッ、俺が先にお前のことずっと好きだったのに、あんなぽっとでのイケメンにばっか媚ケツ振ってんじゃねえぞ十鳥……っ、裏切りやがって……ッ!」 「ぉ゛ッ、ぐ、ぅ……ッ」 「俺は今お前よりも上なんだぞ? わかってんのか? チンポ挿れてくださいお願いしますだろうが清純ぶってんじゃねえ!!」 「う゛ッぎ、ィッ!!」  限界だった、何もかも。最早既に限界値は突破していたのかもしれない。萎えるどころか勃起していたそこからは最早何も出なかった。それでも頭の中を塗り潰すほどの快感に飲まれ、視界が白く点滅する。堪らず二通の身体にしがみついたときだった、中を犯していた二通の指が止まる。そして、胸元で二通の吐いた生暖かな息が吹きかかり全身が跳ねた。 「……っ、十鳥君、今女の子イキした?」 「ち、……ぁ……して、な……っひッ! ぉ゛ッ、ぐ……っ、や、も、抜けッ、ぬい、ッ……ぅ゛う~~ッ!!」 「いやしたよね君今完全にチンポから精子出さずにイかなかった? 俺の見間違いじゃないよね」 「ち、がッ、ぁ゛ッや゛ッ、も゛、やめ」 「はあっ、かわい……っ、なに十鳥君痙攣してるの? ねえお目々ぐるぐるしてる十鳥君……っ、かわい、……っ、嬉しいなあ俺ととり君のことちゃんと気持ちよくさせられたんだね、ね、もっとイカせられるように俺頑張るよ、十鳥君が女の子になれるよう俺いっぱい動画見て練習したから……っ!」 「や゛めろっ、や゛め、ふ、たご……ぉ……ッ、ひ、ィッ!」  痙攣する下腹部を抑え込まれ、耳元で呪詛を吐かれながらも二通にケツの穴を弄られ続ける。濡れた音と二通の声が頭の中をぐるぐると周り続け、匂い立ち込める倉庫の中弄られすぎて腫れ上がった前立腺をさらに執拗に愛撫され平静でいられる人間などいれるのだろうか。  ぴゅっぴゅっと、性器から断続的に溢れる透明のそれがなんなのかもわからない。この男が何を言ってるのかもわからない。  何度達したかもわからない。痙攣の止まらない下腹部を離してもらえないまま、終わらない責苦に次第に意識は遠のいて行く。自分の下半身から溢れてるものがなんなのかもわからないまま、ぷつりと思考は途絶えた。 「十鳥君、きもちい……? ね、俺、ちゃ……ちゃんと上手にできてる……?   ……あれ、十鳥君?」  ……。  …………。  酷い悪夢を見ていたようだ。  軋むベッドに飛び起きれば、そこには見知った顔があった。 「……?! い、一番ケ瀬……?」 「おわっ! び、びっくりした~……いきなり飛び起きて大丈夫か?」 「こ、ここは……ッふ、二通は……」  咄嗟にあの変態レイプ野郎の名前を口に出したことで俺はあれが夢ではないと理解した。  そして、一番ケ瀬は不思議そうな顔をする。 「ここは俺の部屋。次の授業のときいなかったら聞けば、体育館倉庫に行ってるのは見たって聞いて探しに行ったんだよ。……てかなんで二通?」 「……い、ないなら……いい」  一番ケ瀬の言葉にほっと安堵する。  そもそもあの二通は本当に俺の知ってる二通なのだろうか。あまりにも生々しい記憶だが、あんな二通俺は知らない。……夢ならまだいい、でも。 「何かあったのか?」  伸びてきた手に肩を触れられそうになり、慌てて俺は身を引いた。 「さ、わるな」 「おい、どうした?」 「……何もない。けど、ぉ……お前はいきなり触るから……やめろ」 「なんで片言? ……つか、まだ俺には甘えてくんねえのか」  え、と思った次の瞬間、更に距離を詰めてくる一番ケ瀬にぎょっとする。おい、とやつの胸を押し返そうとすれば、その手首ごと一番ケ瀬に掴まれてしまう。 「我慢強いところ、お前のいいところでもあるけど、悪いところでもあるな。……俺は悲しいぞ、十鳥」  ……あんなこと、言えるかよ。  一番ケ瀬の真っ直ぐな目は今の俺には眩しすぎて、堪らず俺は布団を頭まで被った。 「おい、布団に逃げるな」 「……」 「十鳥」 「し……心配掛けて、悪かった。……それと、ここまで送ってくれてどうもな」  けど、やっぱり無理だ。震えを誤魔化すように身体を丸めれば、布団越し、ぽんぽんと一番ケ瀬に撫でられた。  ……このままがいい。お前だけは変わらずにいてほしい。  そう思うこと自体がエゴなのだろうか。  ◇ ◇ ◇ 「……っ、と、十鳥君……? どうしたの、十鳥君……!」 「……あーあ、可哀想に。童貞は手加減しらねえからな」 「……っ、一番ケ瀬……! って、ま、待てよ、十鳥君をどこに連れて行くんだよ、約束とちがうだろっ! 最後まで俺に……」 「……だから、最後まで。……十鳥が意識ねえんだしこれ以上は無意味だろ」 「ッ、……」 「……ま、三軍にしてはよくやってくれた。やっぱこういうのは適材適所だよな? 二通。現役ストーカー野郎のレイプ魔役は迫力あってなかなか良かったぞ」 「っ、一番ケ瀬……お前……」 「言っておくがお前も共犯だぞ、二通。……こっちはお前のやってきたこと全部黙っててやってんだ、相応の役目は果たせよ。……いや、お前にとっては役得すぎるか?」 「……変態野郎が……ッぐ、……ッ!」 「……口の聞き方には気を付けろって言ったよな。……また他のやつらのサンドバッグに戻りたいんなら戻してやるぞ」 「っ、すみません……でした……」 「ああ、最初からそうしとけよ」  …………。  ……。 「……ッ、糞、あの野郎調子に乗りやがって顔だけの変態が……ッ!! ……ッ、はあ、可哀想な十鳥君……俺が……いつか俺が絶対にあいつの毒牙から助けてあげるからね」

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