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第8話
そして翌朝、目が覚めるとと渉に抱きしめられて、渉の部屋のベッドに横たわっていた。しかも全裸で、行為の跡も生々しく体に着いた体液が乾きかけている。
前夜、飲み直したいと言う渉の誘いに乗って、店の外に出たが、他の店もすっかり閉まっていた。終電も無くなって帰れなくなった私に、渉が泊まりにおいでと言ってくれて、歩いてマンションまで来たのだ。大の男が二人、酔って足元も覚束ない状態で歩いているのは滑稽だっただろう。
渉の家までの道すがら、酔っていた所為で、途中でどんな会話をしたかあまり覚えていない。思い出せる事と言えば渉を振った彼氏の話と、常連客の悪口くらいか。しかし、そんな雰囲気になった記憶もないのに、玄関のドアが閉まるか閉まらないかのうちに互いに我慢しきれなくなって、どちらからともなく激しく唇を求めあっていた。
夢中で唇を貪りながら、渉が「エッチしよう」と囁いたのに、いいよと答えて更にキスが深まった。荒い息遣い、キスの合間にかわされる会話で、シャワーはと聞くと、そう言うの気にする人なんだね、と笑われて、変なことを言っただろうか……と一瞬考えていると、
「カレシと会ったらすぐ出来るようにね、………もう準備して…あったんだ。」
なんて言いながら、私の尻の割れ目をなぞるから思わす笑ってしまった。
「ワタルチャン………そっちなの?…何となく…逆かと…思った。」
「ふふっ………その反応よくされる。……だから…さ…どっちだって良いんだけどね………コウスケクンはどっちが好き?」
欲情に溺れた吐息を吐きながら、そう言って笑っている。
「俺?……準備……なんてしてないし……。ワタルチャンの好きな方で…」
キスをしながらそんなことを話して余裕のある振りをしていても、もう二人とも限界だった。激しく舌を絡ませ、そのまま着ていたものを脱がせ合いながら、ベッドに縺れ込んだ。お互いの感じるところを弄れば、嫌でも敏感なところが反応し始める。
渉が切なげに浩介くん挿れてと懇願するのに煽られて、生まれて初めて他人の『中』に己の昂りを突き入れた。全てを搾り取ろうとするようにうねる渉に締め付けられて、初めての快感が背中から這い上がって脳を直撃する。私はその日、童貞を卒業した。
その後は何度達したか分からないほど欲望のままに求めあって交わり、快感に溺れて疲れ果てて、結局そのまま眠ってしまったようだ。
シャワーに行く余裕もないほど疲れ果てるまで交わっていたことは赤面してしまうほど恥ずかしいが、しかし、無防備に眠っている渉の寝顔が案外可愛くて、悪い気はしなかった。
酒も抜けて酔も冷め、興奮も去ってしまうと、言った言葉も至った行為も何とも滑稽だと思う。部屋を見渡すと、ベッドにたどり着くまでに洋服が点々と落ちていているのが見えて、随分盛っていたなと思わず苦笑した。何も感情が高ぶるような話など全くしていないはずだったのに、なんでここまで盛り上がったんだろうなと笑ってしまうが、互いの快感を確かめ合うように行われたその行為は悪くなかったなと思った。
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