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仁科の葛藤
2週間も経つと仁科の傷ははだいぶ癒えた
まだ痛むがかなりマシ…と言った感じ。しかし、あまり手の自由がきかない
うまく動くか?疑問だ。
仕事の方は徳川のおかげでかなり楽になったと感じる。
ツバキは…ローターでの訓練を終え、アナルパールでの治療に入ったらしい
なんとなく、口惜しい気がするのは秘密。
なんとなくだがツバキには特別なものを感じる。それゆえいつか身請けされると思うと複雑な心境しかない。
今は間引きされないよう防ぐのが目標だが…
そしてあのチビ…小さななりのせいで油断したが、かなり凶暴で徳川には荷が重いかもしれない。やっかいだ
が、いい勉強にはなるだろう。
間引かれるならそれはそれだ…
ケガをした右手を見る。
(くそ…)
この数日で酒をだいぶあけた。
ここ最近ではありえない量だ
控えてはいたが、今回のことで歯止めが効かなくなってしまった。
別にミスをしたわけではないが酒の問題があり真っ当に働けず、こんなとこで拾われて今に至るが医者として誇りはある。
腕としては悪くない…と思う。
三河はサイコパス気質なとこがあり、尾張はどこぞのヤクザの後継らしい…
3者ともにまともに働けないが、それぞれ医者としての腕を買われ今に至る
カラン…と氷の入ったウイスキーを傾けると、徳川は医局に帰ってきた
「わ…っ、また、酒?大丈夫っす?」
仁科の手におさまるグラスを見て徳川は慌てるが、仁科は動じない
「問題ない。ツバキはどうだ?」
「戸惑いはありますけど上々っす」
「おチビは?」
「カテーテルは取れました。けど、なんつーかあんま食わなくて。治療もですけどすべてにおいてかなり拒否的っすよ。正直、間引きも時間の問題かと…」
「そうか」
暗い表情の2人の元に電話が鳴る
「はい、仁科。え?アイリスが?…わかりました。新人と行きます」
「アイリス?」
「1年半前だ。1年半前身請けされた花がズタボロらしい。引き取りにいく。いつもは指導官だが医療が必要かもしれん」
2人の間に緊張が走る
指導官が運転する車に乗り引き取りへと向かった。
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