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アイリス
急ぎ引き取り先に来た2人は案内された室内に入った。
その室内はひどい血液の匂いが充満しており
徳川と仁科は眉をしかめた。
「うっ…すごいな」
真っ赤に染まるシーツに横たえられた人物を一瞥すると仁科は客に向かって尋ねる
「生きてはいるんですね?」
「ああ、かろうじてな。良かったよ。死んだら返品はできないからな。特に表面上傷はつけてはいないはずだか、アイリスは従順すぎてな…ついつい、限界まで追い詰めてしまった。
壊れる寸前の所を申し訳ないが返品して別のを購入したい。今度は…そうだな、少し跳ね返りくらいがいいだろう」
「何が…」
徳川は呟きながらおそるおそるアイリスに近づき呼吸を確かめ、脈に触れた。
意識は無く瀕死ではあるが助けはできそうだ。
顔は綺麗だが口から血が見え、首には絞められた跡…出血は内臓からか?
「徳川、行くぞ…。お客様、この後の処理についてはおって別の者が参ります」
会釈すると仁科は歩き出した
慌てて徳川はシーツごとアイリスを横に抱きかかえた
体重もしっかりあるし、肌ツヤもいい…
可愛がってもらっていたに違いないのに
何が起きてこんなになったのか想像がつかない
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屋敷を出、車の後部座席の扉を開け徳川はアイリスを後ろの席に横たわせ、振動を与えないようにゆっくりと扉を閉めた。
次いで運転席を開けて中に乗りこみ、できるだけ早く、なるべく揺れないように気づかい運転した。
「あ、あの事情を問い詰めなくてよかったんですか?」
「ああ、落ち着いたらアイリスが話せるだろう。非常に従順でいい子だから。正直、俺も驚きだ。特に手がかからず1ヶ月ごとの定期診察でしか関わったことはなくすぐに売れた子だったからな」
「なんすかね…内臓?傷は無いって言ってたけど、首を絞められた跡あるし」
「よく診てるな?感心だ」
「まあなんと言うか、、首は…締めるとナカが締まるからな。後は診察しないと分からないが…」
経験があるのかないのか仁科は少し恥じらいながら首を絞める理由を答えた。
「アイリス…この後どうなるんです?」
「貧血の状態によっては輸血だな。傷が癒え次第ではあるが再指導になるだろうな…だが、あの主人への忠誠心なんかが芽生えちゃってるとうまくはいかないかもな」
「そしたら?治療部?」
「のばらみたいに助手になるパターンもあるっちゃある。欠員が出たし」
「のばら…さんって、返品されたんでしたっけ?」
「経緯はよく分からないがそうらしい。再商品化を図ったが本人が〝医師の手足になります〝って直談判したのと、急変した花を救出したのがきっかけらしい」
「へぇ。いろいろっすね、みんな」
「のばらには助かってるよ、ちょっと性格がきつすぎるけどな」
ハハと2人は笑いあり花屋へと帰っていった
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