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のばら2
「ここが治療部だよ。ようこそ」
三河はのばらをベッドが3つ並ぶだだ広い部屋へと案内した。部屋の隅には赤いカート、救急物品用か?
すべてのベッドが空だが異質な光景にのばらは息を飲む
「う…」
「どこがいい?」
尾張は好きなとこを選べと促す
「端…廊下側がいい」
「んじゃ寝な。暴れるつもりあるか?無ければ右手だけ拘束させてもらう」
「っな。暴れないけど…縛られる意味が分かんない」
「脱走対策でな」
「しないし」
「決まりなんだよ、ごめんねのばら」
謝る三河の姿にちっと舌を打ちベッドに転がるのばら。
「好きにすれば?」
のばらの右手を三河がベッドにくくる
「本当…あんたら花屋って最低。治療部って3人定数?」
「基本3だが俺らのキャパ次第で1人あたま2人受け持つ計算で6人はいける。が、そこまで出したことはないな、何せどいつも手がかかるからな。あとは、ベッドはあとから出せるからとりあえず3台だけにしてある」
「ふーん。とりあえず寝ていい?ボク、寝てないの」
「ん〜…まあ、俺ら仕事上がりだからいいよ。夜中に夜勤の先生がくるけどそれまでは好きにしたらいいよ」
三河と尾張はのばらから離れ、三河が部屋の隅にいた助手を呼ぶ
「助手さん、スミレさーん彼の観察だけ頼むね」
「かしこまりました」
スミレは2人に会釈すると部屋の隅にある観察用の椅子に腰掛けた。
三河、尾張はスミレに場を任せ退勤した。
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のばらはぶすっとした顔でしばらく横になり、寝ようと試みたが寝れず
右を向き左を向き落ち着きがない
そんな様子を見てスミレがのばらに近寄る
「どうしました?」
「眠りたいのに寝れないの!眠剤飲みたい…。医者呼んでもらえる?」
「えーと…それは夕飯のあとでもいいかな?」
「はぁ?ボク、いま寝たいんだけど!」
「ん〜困りましたね。あんなものは飲まないにこしたことなないんですが…」
スミレの表情は堅い
「あなた助手でしょ?決める権限あるわけ?欲しいの!先生に言ってよ」
凍りついた表情のスミレは隅にあった椅子をカラカラと引きずり持ってきて、のばらの隣に座る
その表情のスミレにぞくっと背筋が凍るがのばらはなおをせがんだ
「薬!」
「話を…しましょう。薬は考えます」
「意味不明…」
スミレは堅い表情のまま話し出す
「のばらはまた売られたいですか?それと、のばらは花になる前何の職業に?」
「話す意味ある?」
「コミュニケーションは大事と思います。
まずは私ですが…保育士でした。訳あって花として約20年前になりますがここに来ました」
「ふーん…花あがりな訳?。ちなみに売られたくはないよ。てか無理だろ?売られずに済むなんて」
興味なさそうに返事をするがチラッとスミレを見て話の続きを待つ
「はい。それが、私の場合温情で売られることはありませんでしたが一通りの指導はされて、助手になり今に至ります」
「そんな…裏ルートあるわけ?意味分からない。売られずに花からあがるなんて」
「びっくりしますよね。仮にもしのばらの職業が有益なものなら使えるかもしれない。ただし体の一部を切りとられる覚悟がいります。私は角膜をやられれているので」
「なっ」
言われた言葉に言葉が出ない
「私で協力できるか分かりませんが、同じ花のよしみで尽力はするつもりです」
「…看護師。内科で3年救急で2年の合わせて5年してた。でも4年近くブランクがある」
その言葉を聞き、スミレは表情を明るくし、声を弾ませた。
「看護師!それは使えますよっのばら。医局は万年人員不足です。うまく売り込めば…尾張先生ならなんとかなるかもしれない」
「……あんまり、希望もたせないでよ。もしかして…って思ってダメだったらツラすぎなんだけど」
「だけど、行動に移さない限り可能性は0です。私は試す価値充分にあると思います」
「…まあ、考えとく」
「とりあえずは夕飯になります。待っていてください」
スミレは厨房へと向かった。
夕飯は持ってきてくれたが結局眠剤はくれず、のばらは眠れない夜を過ごした
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