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のばら3
翌朝スミレは、白衣姿でプラプラと気だるけな様子で歩く尾張と出くわした
「あ…尾張先生おはようございます」
「スミレ、おはよう。今日も妖艶で綺麗だな」
「おそれいります。それはそうと…彼、のばらは元看護師だそうです」
「で?」
「医局の人員を考えると彼は戦力になるかと…おひとり医者が辞める予定ありますよね?」
「たしかにそうだが…まあ親父に聞いてみるよ。期待はするな」
尾張はここ花屋を束ねる極道の跡取りで、スミレはその傘下の組員の息子だった。
尾張は行く末、花屋を任せられるだろうがしかしいまはただの医者
経営にはなんの権限もないからどうしようもない。
のばらが元看護師の情報は少し前親父から聞いていて、こちらに回してほしいと訴えたが、変わりの医者が調達できたとかで看護師は要らないと言われ出来なかった。
上の言うことには逆らえない…
「さぁて、スミレ。面倒だけどのばらんとこ行ってくるわ」
「行ってらっしゃいませ」
尾張はのばらの待つ治療部へと向かった
「お待たせ。のばら」
「待ってない」
「ああ?なあ、お前顔色悪くない?」
「寝れなかったの!」
のばらはムスっと答える
「まあ今から治療だから疲れて眠れるさ」
治療と聞いてのばらは反応した。
キッと尾張を睨みつけ威嚇までしかなり警戒している
「痛いのは嫌だよ?気持ちいいのなら…まあ我慢してやる」
「お姫様だなぁ、のばら。手枷外すけど妙な真似すんなよ?もしそんな素振り見せたら痛いことするから」
「…分かった」
「お。素直じゃん」
尾張はのばらの手枷を外した。
瞬時、のばらは尾張を突き飛ばしベッドを降りて治療部の外へと走った。
そのために廊下側のベッドを選び、この時を待っていた。
尾張はのばらのその様子に舌打ち、邪魔になる白衣を脱いでのばらのそばへと大股で歩いていき、のばらの後ろ手を掴み肩に手を当てのばらの肩をなんの躊躇いもなく外した。
「っぎゃーっ」
あまりの痛みにのばらは肩を押さえうずくまり、尾張を見上げた
腕に龍の彫り物…
なんだよ…それ。
「極道…なめるなよ、のばら」
のばらの外していない方の腕を掴み立ちあがらせる尾張
そのまま引きずりベッドに突き飛ばす
「痛ーっい…やめ」
まったく笑みのない尾張の顔にのばらは続く言葉が出てこない
「言ったよな?妙な素振り見せるなって。肩は今からいい子でいたらまた戻してやる。そのまま今日の調教だ」
「…っっ」
のばらは息を飲む。
尾張は白衣のポケットからスマホを出しスミレを呼び出す
「ブジー用意してくれる?悪いけど至急」
聞こえた言葉にのばらは力無く首を横に振っている。完全に腰が抜け動けない様子だ
「嫌ってか?悪いことしたんだから仕方ないよなぁ」
のばらはわなわなと震えている。したことないが確か泌尿器科で使う道具だ。
尿道を拡げるとかいうアレ…
間違いなく痛いに決まってる
その後すぐ、スミレが道具をもってあらわれたが2人の様子と尾張から見える彫り物にため息をついた
「はぁ…猛(たける)さん…お父様から言われませんでした?簡単に彫り物をカタギに見せるなって。それにその子の肩…外しましたか?」
普段怒らないタイプほど怖いものだがまさにスミレはそのタイプで尾張はたじろぐ。
「う…まあ、そうだが」
「いけません。ただの暴力は。余計に言うことを聞かなくなりますよ?5年働いてわかりませんか?。彼の肩をはめます。いいですね?猛さん」
「分かった」
スミレは道具を机に置き、のばらを起こし背中側のベッドに乗りバキっと音を立てのばらの肩を入れた
「あぐぅーっ!!」
「これでいいはずです。さて、尾張先生?監視が必要ですか?そうでなければ退室しますが」
「いていい」
「分かりました」
スミレはベッドから降りそばに控える
「敵わないな…スミレには」
のばらは2人の人間関係がよく分からず不思議に思った。
とりあえず尾張は猛という名前で極道らしい。
スミレとはどういう関係なのだろう?
「気になりますか?」
控えたスミレに聞かれ、頷くのばら
「私は猛さん…尾張先生のお父様がおさめる尾張組の傘下の組員の息子なんです。ですから、猛さんが赤子の頃からの付き合いでもう30年以上の付き合いでしょうか?」
「そうなるな」
「極道ってこと?」
ますます意味がわからない。
「元花なんじゃ?なのに傘下の息子?」
「父がポカしましてね…組に損害を出したんです。で、当時私は保育士をしていたんですが、身柄を拘束されました。今から14年ほど前でしょうか?」
「何歳な訳?」
「44です」
「よ!?」
30代と思っていたから驚いた
「じゃあ…刺青があるわけ?」
「はい。腰に小さいのがひとつ」
話ながらスミレはのばらに近づきのばらの両手をあげる
「痛くありませんね?じゃあさっさと済ませてしまいましょう」
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