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闇スミレ2
「スミレ?大丈夫か?」
尾張は終業後、スミレの部屋に立ち寄り惨状を目の当たりにし、一瞬慌てた
ベッドに横たわるスミレが気になりかけよるがどうにか意識はある。
「よかった…」
床を見ると薬の袋
「リスパダールか…」
病院に連れていくか悩んでいる時にスミレが目を覚ました
「…ぅ」
ぼやける視界に見える尾張の姿
「猛さん!?」
スミレは慌てて体を起こそうとするが尾張により諫められた
「寝とけ。どうする?病院行くか?」
「いえ。大丈夫です。落ち着きました」
「明日は公休だからゆっくりしてろ。感情コントロールが回復したらまた来い」
「分かりました。あののばらは?」
スミレは今気がかりにしているのばらの様子を尋ねる
「大丈夫だ。あいつ図太い神経してるよ。すぐ慣れていい動きをしてくれそうだ」
「よかった…」
スミレは安堵し、再び眠りについた。
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そんなことがあってから一年が経過し…
悲しいことに菊の処分が決まった。新しい花…ツバキも入った。
菊は間引いたと花たちには伝えられているが菊は実はまだ花屋の地下牢で生かされている。
どうやら彼は稀な血液でしばらく生かされる見込みとのこと。
が、その血液型の臓器を依頼されればそれまでだ。いっそ殺してやればいいのに…無情だ
感情のコントロールがうまくいく自信がない
スミレの手にはメスが数本…
深夜、地下に忍びこんだ。
すでにコントロール不可能でフラフラと歌いながらスミレは歩いた
「かーごめかごめかーごのなかのとりはいついつであーる。よあーけのばーんにつるとかめがすべった……」
すぅとスミレが地下牢の扉を開け、中の監視員に向けてさっとメスを投げると監視員の頬にはツーと赤い血が流れた
「うしろのしょうめんだぁれ?」
完全に我を失ったスミレはメスを次々に投げ監視員の動きを制した
「ちょっちょっと!あんた助手さんじゃないか!!どうしたんだ。応援応援要請っ」
別の監視員が応援を呼ぶ。その手をスミレは掴み、バキっと折った
「ぐぁーっっ」
はちゃめちゃな光景に菊は言葉が出ない
スミレはなおも暴れる
「ふふ…こんなところは壊してしまいましょう。需要があるから供給する?意味分かりません…もううんざりです」
応援要請を聞いた尾張が息を切らし、鎮静剤を持って駆けつけた
スミレには見えないように注射器を後ろ手に隠し持つ
「スミレっ!何をしてる」
スミレに言葉が届かずスミレを取り押さえ、床に転がすと動きが止まった
「そもそも花って何ですか?花って…彼らは人間ですよ。したくもないことをさせられ無理やり開かされてっいりませんこんなとこ」
「スミレっ完全にぶっ飛んでやがる」
スミレのズボンを下ろし臀部をあらわにし、臀部に注射を突き刺した。
スミレの上着の裾から腰にある小さな菫の花の刺青が見えるまぎれもない極道の証拠
ズボンを元に戻し尾張はスミレを担ぎ、スミレを医局の控え室へと連れ帰った
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スミレを担いで戻ってきた尾張にのばらは驚く
「えっ!先輩っ。暴れてるやつにもしかしてやられた?」
「逆だ。暴れてたのはコイツ」
「なんで…」
尾張は控え室のベッドにスミレを転がす。
腰の刺青が見え慌てて尾張は裾を下げ隠す
「前に言ってた腰の刺青ってそれ?」
「そうだ」
「なんで隠す?もう知ってるのに」
「スミレには耐えがたい過去だからだよ。極道に産まれたのを悔やんでる
その刺青もしぶしぶ刺れたやつだ」
「やっぱり痛いよね?」
痛いのが嫌いなのばらは身震いする
「痛いが彫りおえた後の達成感はいいぞ。セックスと同じだ」
「なっ。」
「お前、どうしてんの?」
尾張はのばらを見据える
「何が?」
「3年。やられ続けた体だ…やすやすと熱は冷めないだろ?」
「う…それは」
「早いとこ相手見つけろ。花をいじめるなよ」
「いじめないしっ」
正直なところ突然欲しくなるときがある
が、もうそれは封印した。
たまに我慢できなくて自分で慰めるが虚しい…
しかし相手が欲しいとは思わない。
複雑な感情
ただ、満たされない。誰かに寄りかかりたい気分にはなる
でも、今は仕事だ。がんばろう
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