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第4話
どうしてーッ!!
脳が遅れて理解する。
身動きとれない。ぎゅっと、熱く逞しい力で俺の体が抱きしめられている。
トクントクン、と鼓動が伝わってくる。
「クレイ……さん……」
左胸が奏でる熱い振動。
厚い胸板に頬を押し付けられている。少し身をよじったが、更にぎゅっと強健な両腕に抱きしめられてしまった。
胸が押し潰されそう……
伝わる体温が切なくて……
「そうじゃない。俺はそんな名前じゃありません」
「でも」
「『クレイ』です。あなたはどうして他人行儀な呼び方を」
掠れた声が震えている。
「すみません。私の言った事は忘れて下さい。少し混乱してしまったようです」
離れた体温。
ハッとして胸が詰まされた。
(『私』って……)
さっきまで『俺』って言ってたのに。
壁ができてしまったようで。
でも、その壁だって元はと言えば俺のせいだ。
「クレイ……」
「ありがとうございます。以前のように呼んで下さるのですね」
瞳の青い水面 に穏やかな微笑みを浮かべた。
少し俺の事、受け入れてくれたのだろうか。
「本当でしたら、もう少しお休み頂きたいところですが、時間がありません。今、あなたの身に起きている事を端的にお話させて下さい」
なぜ俺はここにいるのだろう?
いわゆる異世界転生というやつなのだろうか?
「俺、トラックにはねられた覚えはないし……」
「とらっく?」
この世界にはトラックがないんだ。
「大きな鉄でできた荷物を運ぶ乗り物で……」
「??」
「あ、いえ。何でもありません。話を続けて下さい」
「ヴァイスリッターは夢を見ておられたのですね。では、本題に戻ります。間もなく、軍事法廷が開かれます」
あなたは裁かれる。
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