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第5話
「俺が!?」
一体、何を??
「やはり覚えてらっしゃいませんか。あなたは……ヴァイスリッター、あなたは皇帝陛下の殺害を企てました」
罪の名は、此の国 ジャンダルム皇国への謀叛。
「クレイ!」
「どうか、落ち着いて。私もあなたがそのような事をするとは思っていません。これは、何者かがあなたを犯人に仕立て上げようとした罠です」
強い瞳の光が胸を穿った。
「あなたを信じていますよ」
ありがとう。
何も分からなくて、俺は自分勝手かも知れないけれど、信じてくれる味方がいる事がどれ程心強い事か。
「裁判といっても名ばかりのもの。あなたの主張は何も聞いて貰えないでしょう。法廷はあなたに罪状をなすり付けて、判決を言い渡すための形式的な場です」
「俺はどうなるんですか」
「幸い、皇帝陛下に命の別状はありません。未遂に終わり、あなたは警備兵に取り押さえられました。その時の怪我が元で、あなたは記憶を失っているとはいっても……」
謀叛を起こした大罪人
「判決は公開処刑。……銃殺刑と決まっています」
目の前が真っ暗になった。
「そんな……」
「判決が覆る事はありません。刑は七日後に執行されます。あなたの命はあと七日間」
避けられない命の刻限だ。
待っているのは絶望の未来。
「ですが!」
強い語気に呼び戻された。
「これはチャンスと見て取るべきです」
瞳の奥が力強く頷いた。
「皇帝弑逆未遂事件があなたを陥れる罠ならば、犯人は必ず法廷に現れます。あなたの結末を完結しなければ、完全犯罪は有り得ない」
「それじゃ」
「そうです。これは千載一遇の好機」
「法廷で犯人を取り押さえる」
「そう。あなたの無実を証明できる唯一無二の方法です」
これしかない。
「しかしリスクも伴います。犯人とあなたが直接対峙する事になるのですから。それでも、あなたは……」
「やります」
ここで手をこまねいていても、何も始まらない。
「少しでも可能性のある方へ賭けてみたいんです。だからお願いです。クレイ、協力して下さい」
「もちろんです。あなたを全力でお守りします」
強い意志を瞳に、穏やかな笑みを口許にたたえた。
「代わりに……と言っては失礼ですが、一つだけお願いを聞いて頂けますか」
「何ですか」
クレイには助けて貰っている。
俺にできる事なら何でもしよう。
「では。敬語をやめて頂きたいのです」
「えっ」
そんな事?
「私はあなたの補佐官です。部下に敬語は変ですよ」
「分かりました」
じゃない★
「分かった」
「はい、よろしくお願いします。俺もあなたと二人きりの時は、一人称を変えさせて頂きますね」
「うん」
ちょっとだけ、近づけたかな?
距離が埋まる事はない。でも、ちょっとだけ……
異世界転生したなんて言っても、きっと信じて貰えないだろう。
それでも今いる俺をクレイは信じて、力を貸してくれている。
この窮地を脱したら、何でもいい。クレイの助けになりたいって思うんだ。
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