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ch.11

この9月からシックス・フォームの2年生(高3)に上がった僕は、大学進学に繋がるAレベル(統一試験)を意識したより本格的な勉強が始まった。クラブ活動はほぼ卒業したことで一緒にバカンスに行った3人とも以前ほどつるまなくなり、僕が意識的に距離を置き始めたこともあって、もっぱら勉強とバイトに専念する日々を過ごしていた。 そんな味気ない日常がすっかり染み込んでいた9月の末。 僕は、ある日突然、恋をした。それは、バイト先のカフェに客として現れた女学生で、僕はすぐに目を奪われた。バラ・マーケットの近くのお嬢様学校の制服を着ている彼女はとても可愛らしく、窮屈なブレザーが大きなおっぱいを強調していた。ここ数ヶ月、忘れかけていた男らしい欲求が強く頭をもたげるのを感じた僕は、彼女にアイス・ラテを給仕しながらこっそり声をかけた。 リズと名乗ったその子は、まんざらでもなさそうに僕を上目で見つめ、綺麗な金髪をピンクベージュのマニキュアの指先でいじりなら、少しもったいぶって連絡先を教えてくれた。 早速その週末にデートの約束を取り付けた僕は、9月の月末の日曜日、ウキウキしながら家を出た。 リズは僕の最寄りの一つ隣りの駅の近くに住んでいて、そのキングス・クロス駅で待ち合わせた。そこから彼女が観たい映画を上映しているバービカンへ移動して単館系の映画を2本観たけど、早く彼女にキスをして、その先に進みたかった僕は、全く上の空で内容なんて覚えてなかった。 夕方、その映画館があるモールのピザ屋で小腹を満たした後で、外に出て、初めて手を繋いで歩いた。彼女を見ると彼女も僕を見上げて笑っていて、背伸びした化粧も愛らしくて、ドキドキした僕は、その場で彼女にキスをした。彼女は僕の胴にぎゅっと腕を回して、「うちに来る?」って言うから、僕は早くも股間が熱くなってしまって、お預け中の犬みたいな気持ちで彼女の家に直行した。 彼女の家に着いた時には、物事がうまく進む時ってこんなにとんとん拍子に進むもんなんだ、って感動していた。「親が帰ってくるのは遅いの」と僕の手を引いて階段を登る彼女は、甘い、いい匂いがしていた。 彼女の部屋に入るやいなや、僕は、ケモノになった。下腹部の燃えるような欲求に突き動かされるように彼女を抱き締めて、めちゃくちゃにキスをして、服を脱がして、脱ぎながら彼女をベッドに押し倒した。舌を絡めるキスは気持ちよくて、首を嗅いで、痺れる頭でおっぱいを揉んで、かわいい乳首をしゃぶった。それだけでペニスは限界で、細い指先に撫でられた先端が先走りで濡れていた。 もう限界。焦る気持ちで彼女の脚を開いて、その股間を覗き込んだ、次の瞬間。 体の中に冷たい雷が落ちて、目の前が真っ白になった。 何が起きたのか、よくわからなかった。 心臓が口から飛び出そうなほどドキドキして、気がつけば、何かを喚く彼女の声を背中に聞きながら部屋を転がり出て、必死で服を着て、彼女の家を字の如く逃げ出していた。 なんとか呼吸が落ち着き始めたのは、地元のエンジェル駅を出て、バイト先のカフェの辺りに辿り着いた頃だった。 僕は、なんだかよくわからないままスマホを取り出して、先生のクリニックに電話をしていた。 そして翌週、10月の第1週の金曜日に、予約が取れた。 * * * 予約の日を待つ間、僕はずっと、混乱していた。 学校にはなんとか行ったけど、バイトは休んだ。リズから僕を心配する連絡が頻繁に来たけど、「具合が悪い」と適当に返しているうちにフラれた。 少しずつ冷静になっても、何が起きたのかよくわからない。もう少し落ち着いてくると、何かが起きたのではなく、彼女のそれを目の当たりにした時に、自分のジョセイキを見た時のショックや、初めての検査で感じた苦痛や、バカンスで感じた恐怖が一気に蘇ったことを少しずつ思い出した。 僕はもう、駄目かもしれない。そう思うと、恐怖を通り越して悲しくなって、涙が一つこぼれたら止まらなくなって、布団に潜って数時間も嗚咽の声を抑えた。 そして、疲れ果てるまで泣いた僕は、一刻も早く先生に会いたい、そう思った。

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