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ch.13 (R-18)

リズとの一件から先生の診察を経て、僕の日常は、再び、勉強とバイトに明け暮れる日々に戻っていった。あれ以来、恋や突発的な性欲の噴火のようなものは起きず、年齢の割に地味な日常を送っていた。 オナニーは以前と変わらず、2〜3日に1度、寝る前に機械的にペニスをしごいて射精するだけで、先生に勧められた女性器ではする気にならなかった。オナニーどころか、ジョセイキをもう一度見てみるとか、触れる気にもならなかったのは、やっぱり、それがあること自体に大きな抵抗を感じていたからだ。何がどうなるかわからないし、何か大変なことが起きたらと思えば不安は尽きない。そして、何より一番大きかったのは、それを知ってしまった後で自分が何か大きく変わってしまうのではないかという未知への恐怖があった。 けれど、10月の下旬にもなって、平凡な毎日にさすがに退屈を感じ始めた矢先、ついに僕は、興味本位でオナニーをしてしまった。 …あれだけ恐れていたはずなのに、ほんの気まぐれで股間に手を伸ばしていたのは、先日、先生が言った「君は何も駄目じゃない」という声を思い出したからだと思う…。 その日も、いつものように勉強を終え、そろそろ寝ようとベッドに寝転がり、スマホのゲームで遊んだ後で、何気なくパンツに手を突っ込んでペニスを弄(いじく)っていた。しばらく擦っても元気にならず、スマホで抜ける動画を探している間、ふと、好奇心が頭をもたげて、軽い気持ちで指をタマの下に滑らせていた。 恐る恐る指を動かすと、薄いグミみたいなものがあった。それは、温かくて、何より柔らかくて、何度かそっと突付いているうちに、思いがけない快感が生まれた。 「…!」 そこからは、夢中だった。その柔らかいそれを、擦ったり、捏ねたり、指で挟んだりして、気持ちいいところややり方やちょうどいい強弱を探した。脚の間に、より強い快感が生まれたり、腰の奥が熱くなったりするたびに声を飲んで、我も忘れて続けた。そして15分も弄(いじ)り続けてついに“達した”時、僕は、生まれて初めて知る熱く痛いような甘い恍惚に、涙ぐんでいた。 その晩から、オナニーのことを考えながら勉強をして、ベッドに入れば我慢を解消する勢いに任せて股間に手を伸ばすようになった。先生の言葉通り、「オナニーで自分の体や性の快感を知ってく」僕は、狂ったようにジョセイキのオナニーに耽る夜を繰り返した。 11月の1週目、僕は、クリトリスは男のペニスだから、指で挟んでしごけば気持ちよいことや、皮から剥き出して直接触ると痛いくらい敏感だけど、擦らないで押し揉んだり捏ねたりすれば、簡単に達してしまうことを知った。 11月の2週目、クリを弄っている間に手が滑って、もう少し下に指が滑り込んだ時、深い所が濡れているのに気づいて驚いた。それこそがプッシーで、濡れることも知っていたけど、自分の体でも起きるのだと知った時は衝撃だった。そして、その滑りと一緒にクリやグミみたいなものを擦るとこれまでにない快感がして、僕は、声を抑えながらオナニーをするようになった。 11月の3週目。水曜に、翌年6月のAレベルを想定した模擬試験があった。試験の前までは勉強に集中し、水曜の夜からまたオナニーに専念した。週末にもなると、プッシーから出るぬるぬるを使った行為に抵抗もなくなり、ついに指を少しだけ挿れてみた僕は、膣の柔らかさと温かさに息を飲んだ。知っているはずなのに、自分の体で知れば、快感を伴うその感触はまるで別物だった。淫らな欲求を抑えられなくなった僕は、夢中で指を挿し込みながら、いやらしい音を立てるGスポットの快楽を知っていった。 11月の4週目。指を挿れることに慣れてしまった僕に、かつての恐怖や不安は微塵もなかった。クリとGスポットの快楽は別物だと知った僕は、両方を刺激すれば意識が飛びそうなほど気持ちよくなれると知った。そして、そんな時には、触れてもいないのにペニスも痛いほど勃起していて、時には同時に達して射精してしまうこともあった。もちろん射精の快感も別物で、二重にも三重にも快感を得ることを知った僕は、あまりにも貪欲になりすぎていたのかもしれない。 そして、11月の最終日。いつものように自慰に耽りながら、ふと僕は、自分ではない誰かに触れられたら、自分では出来ないことをされたら、どれだけ気持ちよいのだろうと思った。誰かが、こうして触れて、口づけて、舐めてくれたなら…。誰かが、他人を想像しながら、ペニスを撫でて、クリを擦って、膣をかき回す指を強めていく。誰かとキスをして、耳や首を食んだ唇が、僕の下腹部に下りていく。誰かの指が乱暴に僕を弄(まさぐ)って、待ち焦がれた快感をくれる。そしてついに、ペニスを僕のそこに突き立てる。ああ誰か、もっと僕を気持ちよくして…そう、もっと…。指を立ててクリを擦り、限界まで熱くなったそこを擦り続ける。 「あッ、だめ、い、いく、ア、せんせ…っ」 熱く濡れた膣が激しく収縮して、Tシャツの腹に、射精した精液が飛び散っていた。 「あ…アっ!?」 今までにない激しい絶頂に、息が止まり、涙が溢れていた。 …その間際、思い浮かべたのは、どうして彼だったのか。 そんなの、わかりきったことだ。 僕は、先生が好き…なのかもしれない。 どうしたらいい?わからない。 目を閉じたまま、脳裏にちらつく彼の面影を払おうとしても、うまくできない。 そして、「おやすみ、ウィル君」と聞こえた気がして、そのまま、恍惚に砕けてしまった心と体で眠りに落ちていった。 11月の5週目。先生への想いを、最初は否定しようと努力していた。たまたま、身近にいる男が先生だから、彼が優しいから、その好意に甘えているから彼が好きだと錯覚しているだけだと自分に言い聞かせてみた。 それでも、気づいてしまった本心を誤魔化すことはできなかった。どうあれ彼が好きで、彼でなければしたいと思えないと真正面から認めてしまえば、オナニーしないわけにいかなかった。 だけど、先生を想いながら毎晩オナニーに耽り、繰り返すほどに想いは募る一方で、どれだけ想っても手が届かない虚しさも大きくなっていった。

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